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腹囲膨満について

獣医師が執筆しました
長尾 乙磨 先生

獣医師

腹囲膨満とは

腹囲膨満とはお腹周りが張っている状態のことを言います。おうちでねこを触っているときに、以前と比べてお腹周りが張ってきたことに気付くケースが多いかと思います。急激にお腹が張ってきた場合には、緊急性の高い病気の可能性が考えられますので、すぐに動物病院を受診することをお勧めします [1,2]。

 

原因

それでは、腹囲膨満が生じる原因にはどのようなものがあるのでしょうか。

腹腔内臓器の腫大

循環の悪化による臓器のうっ血や、激しい炎症、腫瘍の発生によって臓器が腫れている時に腹囲膨満が生じることがあります。特に肝臓や脾臓は腹部に占める体積が大きいため、臓器が腫大するとお腹が張って見えます。また、尿道の閉塞により膀胱に大量のおしっこが溜まっている場合や、便秘により結腸が拡大している場合にも腹囲膨満が生じます。

腹水貯留

腹水貯留とは、お腹に液体が溜まっている状態を指します。肝臓の機能障害や、心臓の機能低下による血流の悪化、腹腔内の腫瘍・感染、出血など様々な原因が考えられます。特にお腹の中で感染や、出血が起きるとお腹周りが急激に張ってくる場合があるので注意が必要です。

肥満

お腹周りの脂肪が多いと、お腹が張って見えてしまいます。肥満のみでは病気とは言えませんが、高血圧や糖尿病などの生活習慣病を引き起こしてしまう可能性があります。カロリーを取りすぎていないか、チェックが必要です。

消化管寄生虫

寄生虫が感染することで腹囲膨満を引き起こす場合があります。特に子ねこでの発生が多く、初期に起こる症状としては下痢や嘔吐、成長不良などが挙げられます。一部の寄生虫は人にも感染しうるので、うんちの処理の際には注意が必要です。

妊娠

避妊をしていないねこの場合は、妊娠によりお腹が張っている可能性も考えられます。特にお外に出ることの多いねこの場合は、気づかないうちに交配してしまっている場合もあるので要注意です。

子宮蓄膿症

子宮の中に膿が溜まってしまう疾患です。病状が悪化するまで明確な症状を示さないことが多く、気づかないうちに病気が進行してしまいます。病気が進行してくると水を飲む量が増える、尿の量が増える、外陰部に血や膿がつくなどの症状が現れます。

また、稀な病態ではありますが、交通事故や腫瘍が原因で消化管に穴が開いてしまい空気がお腹の中に漏れ出してしまう「気腹」という状態や、筋肉の隙間からお腹の中の臓器が出てきてしまう「腹壁へルニア」という原因も考えられます。

 

診断のために行う検査

身体検査

まずは触診を行います。腹水が溜まっている場合は、お腹を軽く叩くことによって水風船のような振動を感じることができます。肥満、腹壁ヘルニアの場合も触診により疑うことはできますが、触診のみで診断を確定することはできません。

糞便検査

寄生虫感染を疑う場合には、糞便検査を行います。顕微鏡で便を調べることで、寄生虫や虫卵を発見することができます。ただし、うんちの一部のみを用いて検査を行うため、一度の検査で寄生虫が見つからなかった場合にも、寄生虫感染の可能性を完全に除外することはできません。

画像検査

X線検査では体の中の臓器の位置や形を評価します。腹壁ヘルニアでは腹筋から外側に飛び出る腸や膀胱が確認できます。また妊娠している場合には子宮の中にいる赤ちゃんを確認できます。エコー検査では、臓器の断面や形などの詳細な評価や、腹水の検出を行います。

腹水検査

腹水が認められる場合には、少量を採取して性状の評価を行います。腹水の色や、腹水に含まれる細胞数、細胞の種類などから、原因を特定するヒントを得られます。

 

自宅での注意

元気や食欲の変化

急激にお腹が張ってきた場合には、臓器が圧迫されることで元気や食欲がなくなるといった症状が生じることが多いです。しかし、徐々ににお腹が張ってくる場合には、見た目でもなかなか気づきにくく、症状の変化も緩やかです。元気や食欲を細かく観察することで、少しでも早く異常に気づくことができます。

食事量が変わらないのにおなかが張っていないか

食事の量を変えていないのにお腹が張ってきている場合には、肥満以外の病気が隠れている可能性が考えられます。

ねこの腹囲膨満に早期に気づくためには、普段からお家で触ってあげることが重要です。毎日触ってあげることで、少しの張りや普段とは違う感触などの小さな異常をいち早く発見しましょう。

参考文献:
1. 獣医内科学 小動物編 日本内科学アカデミー編 文英堂出版2. SMALL ANIMAL INTERNAL MEDICINE. 5th edition. interzoo

執筆者

長尾 乙磨 先生(獣医師)

山形県出身。東京大学を卒業後、同大学博士課程に在籍中。大学附属動物医療センターで診療活動を行っており、専門は消化器内科。学生時代からアメリカンフットボールをやっていることもあり、いぬねこの筋肉や脂肪、栄養学を専門として研究に奮闘中。