ねこの角膜炎について

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工藤 綾乃 先生 獣医師
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角膜炎とは

角膜という目の前面の透明な層の炎症を角膜炎といいます。角膜炎になると、この透明な層が濁ってしまい、ねこの視力に影響を与えてしまう可能性があります。


角膜炎は、炎症の原因によって潰瘍性(かいようせい)角膜炎と非潰瘍性角膜炎の2つにわけられます。

- 潰瘍性角膜炎

角膜に傷ができるなど、角膜の組織が破壊されている場合を潰瘍性(かいようせい)角膜炎といいます。痛みを伴い、目を細めたり涙の分泌が多くなったり、目をこすったりするほか、目の白濁が見られます。
異物が目に入ったり、非潰瘍性角膜炎が悪化したりすることで潰瘍性角膜炎となることがあります。

- 非潰瘍性角膜炎

目の表面に傷がない場合を非潰瘍性角膜炎といいます。ウイルス感染や緑内障、ドライアイなどの原因によって炎症が起こっている状態です。非潰瘍性角膜炎が重症化すると、潰瘍性角膜炎になる可能性もあります。

ねこに特徴的な角膜炎として、好酸球性角膜炎、角膜黒色壊死(えし)症などの病気があげられます。

- 好酸球性角膜炎

好酸球という白血球の一種が角膜に侵入することを特徴とする慢性の角膜の炎症で、4歳以下のねこに多くみられるといわれています。好酸球性角膜炎を発症したねこの最大75%が、猫ヘルペスウイルスを併発していることが確認されています。ちなみに、猫ヘルペスウイルスは人には感染しません。

- 角膜黒色壊死症

角膜の一部が黒色に変色し、その部分が壊死してしまう病気です。猫ヘルペスウイルス感染症を含む、角膜の慢性的な炎症が原因で、ペルシャ猫やシャムネコなどの種類で発生が多くされています。


症状

角膜炎のねこでは以下のような症状がみられることがあります。

- 目を細める、まばたきが多い(特に光に反応する)

- 涙や目やにが出る

- 目をこする

- 目が白濁している、変色している。

- 眼球の表面に血管が伸びてくる など

角膜黒色壊死症の場合、目の表面に黒色のかさぶたが付着しているのが見られるのが特徴的な症状の一つです。

 

診断のために行う検査

角膜炎の診断には、症状の観察や、症状が出た経緯の聞き取りが重要です。
その他、フルオレセインと呼ばれる染料を目に垂らし、潰瘍性か非潰瘍性か、また潰瘍性であればその程度はどれくらいか、などを調べることができます。
また、角膜の組織を採り、どのような細胞が集まってきているかなどを調べることもあります。

 

治療

角膜炎のねこは、痒みや痛みから自分で目を傷つけてしまうことがあるため、掻いてしまうねこでは治るまでの間エリザベスカラーを装着し、目を傷つけないようにする必要があります。

潰瘍性角膜炎のねこに対する治療は、角膜の傷が軽度であれば、炎症が生じている部分から感染が起こらないように抗生物質の含まれた点眼薬や軟膏を処方したり、目の周りの余分な毛を取り除いたりします。安静に過ごすことで、通常であれば1週間程度で治癒する場合が多いです。

好酸球性角膜炎の場合であればステロイド外用薬を処方したり、猫ヘルペスウイルス感染症を併発している場合は抗ウイルス薬を使用したりすることもあります。

角膜組織の一部が死滅したり、色素が沈着していたりする場合は、手術で角膜表面を切除する場合もあります。再発の可能性もあるので経過観察は欠かせません。

また、角膜の炎症が長期にわたっている場合は、放射線療法がおこなわれる場合もあります。治療方針については担当の獣医師と相談しましょう。

角膜炎は適切に治療すれば治癒する病気ですが、長期間放置していて悪化した場合や、重篤な症状が出ている場合は、角膜に瘢痕(はんこん:傷跡)や色素沈着が残る場合もあり、この場合視力に影響する可能性もあります。

目に異常が見られた場合はすぐに獣医師の検査・治療を受けるようにしましょう。

参考文献
1. Feline herpesvirus infection. ABCD guidelines on prevention and management. E. Thiry, et al. J Feline Med Surg. 2009.
2. Safety and efficacy of the mesenchymal stem cell in feline eosinophilic keratitis treatment. AJ. Villatoro, et l. BMC Vet Res. 2018.
この記事を監修した人
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工藤 綾乃 先生 獣医師

札幌出身。地元の北海道大学を卒業後、関東の動物病院で勤務。腫瘍症例の治療に携わるなかで、より効果的な治療を見つけたいと考え、現在は麻布大学博士課程に在籍中。ねこと暮らしながら実験漬の日々を送っている。専門や興味のある分野は、がん、麻酔・集中治療、野生動物臨床など。

発行・編集:株式会社トレッタキャッツ

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