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耳掃除と耳垢

獣医師が執筆しました
原田 優眞 先生

獣医師

耳垢とは?

耳垢とは、耳の中の古くなった皮膚が剥がれ落ちたものや分泌物が混ざったものです。基本的には、普通に生活していく中で自然と出てくるものであり、細菌などから耳を守る働きもあると言われています。しかし、病的な状態においては、ダニやカビなどが耳垢に含まれていることもあります。

 

耳の構造

ねこの耳の構造は、外側に見えている耳介があり、次に真下に伸びる穴である垂直耳道、その奥に横方向に伸びる水平耳道があり、鼓膜につながります。鼓膜の奥には中耳や内耳といった構造があります。耳の働きとして、音を聞くことはもちろんですが、平衡感覚にも関わる機能があります。そのため、耳の中が障害されることで、頭が傾くという症状が出ることもあります(斜頸)。耳掃除という点で言うと、耳の奥には鼓膜があることを理解した上で、奥まで無理に掃除しないよう注意が必要です。

耳掃除の方法

1.単純な汚れのみで傷や赤みのない場合

・使う道具

コットンやガーゼで十分です。綿棒などの細長いものは、耳垢を奥に押し込んでしまうリスクや鼓膜を突いて破いてしまうリスクがあるため使わない方が安全です。

・頻度

汚れが気になったり、匂ったりする場合に軽く行いましょう。耳がきれいな状態なのに耳掃除を行ないすぎると、逆に耳を傷つけてしまうことに繋がりますので注意が必要です。

・方法

お家で行う場合は、基本的に見える範囲(耳介~耳道の入り口)までの汚れを拭うくらいのイメージで十分です。奥まで掃除したり、酷く擦ったりすると耳を痛める可能性もあります。

※今回はねこの耳掃除という点で書かせていただいていますが、人の分野だと、症状が出てない場合に、耳垢を取る行為は勧められないとアメリカの耳鼻咽喉科学会で提唱されています [1]。今後動物の分野でどうなっていくかはまだわかりませんが、ねこでも病気ではない場合に、むやみに耳垢は取らない方が良いのかもしれません。はじめて耳掃除を行う際には、一度動物病院でやり方を確認しておくと安心です。

2.汚れがひどい場合

汚れがあまりに多かったり、ねこが痒そうにしたりしている場合は病院で診てもらうことをお勧めします。病院では、耳鏡という道具を使って耳の中を奥まで確認し、赤くなったり腫れたりしてないか確認したり、耳垢を顕微鏡で見て寄生虫やカビがいないかなど確認します。

それから、その子に合わせた適切な耳の管理の方法や駆虫薬、外耳炎治療薬などの処方が行われます。

 

耳掃除の注意点

・奥までやらないこと

耳の奥には鼓膜が存在し、綿棒などを無理にいれると鼓膜が破れてしまう恐れがあります。鼓膜は一度破れてしまうと修復することは困難であり、耳が聞こえなくなってしまいます。自宅での耳掃除は、目に見える範囲で軽く行うことが大切です。

・耳垢を奥に押し込まないようにする

コットンなどで耳掃除を行う際に、手前にある耳垢を奥に押し込んでしまう場合があります。耳垢が奥に入り込むことで、異物感で耳を気にしたり、音が聞こえにくくなってしまいます。あくまで耳垢を拭う程度にして奥には入れ込まないことが大切です。

・耳垢の多いねこ

一部のねこ(ペルシャや高齢のサイアミーズなど)では耳垢が多いこともあります。そのような場合、感染などがなければ何もしないことを推奨する文献もあります [2]。

 

耳の異常が見つかったら

・感染症(匂い、腫れなど)

耳の中に細菌が感染してしまった外耳炎などの状況では、耳垢が増えたり、匂いがきつくなったり、炎症で耳が腫れたりします。ねこも耳を気にして掻いたり、擦ったりすることもあります。耳を気にする症状が出ているようなら動物病院で診てもらうことをお勧めします。湿度の高い環境や頻回のお風呂でリスクが高い可能性があるので注意が必要です [2]。

・耳の腫瘤(出血、できもの)

耳の中にもできものが出来ることがあります。良性の腫瘤から悪性の腫瘤まで様々です。できものに気づいた場合には、早めの診察をお勧めします。また、ぶりかえす外耳炎の根底に腫瘍が隠れている場合もあります。

・ノミ、ダニなどの寄生虫

若いねこや野外のねこで多く、黒い耳垢が沢山出て、痒みを伴うことが多いです。駆虫薬による治療で根治できるため、疑わしい症状が出るなら早めに治療をお勧めします。

参考文献:

1. Clinical Practice Guideline (Update): Earwax (Cerumen Impaction). S R Schwartz et al. Otolaryngol Head Neck Surg. 2017.

2. Feline otitis: diagnosis and treatment. R A Kennis. Vet Clin North Am Small Anim Pract. 2013.

執筆者

原田 優眞 先生(獣医師)

広島出身。北海道大学を卒業後、関東の動物病院で犬・猫・エキゾチック動物などの診療に従事。犬だけではなく、いろんな動物の医療が充実するといいなと思ってます。興味のある分野はエキゾチック動物、野生動物、血液など