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過食について

獣医師が執筆しました
中村 暢宏 先生

獣医師・獣医学博士

博士研究員(酪農学園大学・早稲田大学・国立感染症研究所)

食欲が増えているとき

最近異常にご飯をねだる、今までのご飯の量で満足できなくなるといった行動はもしかしたら病気のサインかもしれません。食欲は脳の摂食中枢と満腹中枢のバランスでコントロールされていますが、様々な病気やストレス、薬の影響などで過剰に摂食中枢が刺激され満腹中枢が抑制されることで過食になることがあります。

 

原因

脳の病気

脳腫瘍、脳炎

脳の満腹中枢が腫瘍や炎症によってダメージを受けることで満腹を感じられず、食べ続けてしまうようになります。過食の他にてんかん発作や歩き方の異常など神経症状が見られることもあります。

認知機能不全症候群 (認知症)

年齢とともに脳内に老廃物が蓄積し、また脳が萎縮してしまうことで、様々な行動の変化が起きます。過食の他にトイレを間違える、夜間の発声、ウロウロと歩き回るなどの行動が見られる可能性があります。

 

代謝の異常

甲状腺機能亢進症

甲状腺ホルモンが異常に分泌されることでエネルギーを過剰に消費してしまう病気です。足りないエネルギーを補うために過食になります。老齢のねこで起こりやすい病気で、過食にもかかわらず痩せていくのが特徴です。

副腎皮質機能亢進症

副腎からステロイドホルモンが過剰に分泌されてしまう病気です。過食の他に、多飲多尿(水をたくさん飲み、尿量が増える)や皮膚の脱毛や裂傷などの症状が見られます。犬で多く、ねこではまれ。

糖尿病の初期

エネルギー源である糖(グルコース)を体が上手く使うことができなくなる病気です。過食の他に多飲多尿が見られやすく、進行すると元気消失、食欲不振、脱水や、後ろ足の麻痺などが見られることがあります。副腎皮質機能亢進症に併発することも多いです。

 

吸収不良

膵外分泌不全

 膵臓から食べ物を消化する酵素が分泌されなくなる病気で、栄養素の吸収不足により過食となってしまいます。腸炎や胆管炎、糖尿病に併発することが多く、過食になるが体重が減少していく点が特徴です。

薬の副作用

ステロイド(プレドニゾロンなど)

抗炎症薬、または免疫抑制剤として使われます。

抗てんかん薬(フェノバルビタール、臭化カリウムなど)

心因性

ストレス

ストレスを感じると副腎からステロイドホルモンが分泌され、過食となることがあります。

 

診断のために行なう検査

過食の原因は幅ひろく、診断のためには複数の検査を組み合わせる必要があります。また、過食の原因としては、ストロイドホルモンが関連した病態も多く、内服中の薬の内容や副腎の状態など詳細な把握が必要です。

血液検査

一般状態の把握の他に、代謝異常に関わるホルモンの測定や、膵臓からの酵素分泌を評価します。

皮膚検査

副腎皮質機能亢進症や甲状腺機能亢進症では皮膚症状が見られることがあるため、その他の皮膚病との鑑別に必要です。

MRI検査

脳疾患の有無を評価できます。

 

過食に対する治療

過食の原因が病気である場合には、病気の治療が最優先となります。治療がうまくいくことによって、過食も改善されることが多いです。

明らかな病気が隠れていない場合には、心因性の可能性も考えられます。ねこと遊ぶ時間を増やし、よく運動させることはストレス軽減につながり、心因性による過食に対して有効であることがあります。

また、水でふやかしたドライフードやウエットフードは水分が多く、少量で満腹感を得られやすく、さらにカロリーを抑えることができます。一方、食べすぎるからといってご飯の量を急激に減らしてしまうと、肝リピドーシスと呼ばれる肝臓に脂肪が蓄積し、肝機能が低下してしまう病気になる可能性があることから避けましょう。

過食は食欲不振と違って見過ごされやすい行動ですが、病気やストレスが関与している可能性があります。少しでも気になるようでしたらお近くの動物病院に相談しましょう。

 

参考文献

1. 兆候から見る鑑別診断 犬と猫の臨床、長谷川篤彦 監修、2010年

2. 猫の治療ガイド2020, 辻本元、小山秀一、大草潔、中村篤史、2020年

 

 

 

執筆者

中村 暢宏 先生 (獣医師・獣医学博士)

北海道出身。北海道の酪農学園大学を卒業後、都内動物病院にて臨床獣医師として勤務。その後、抗生剤の効かない薬剤耐性菌に対する治療法の研究を行うため、酪農学園大学大学院博士課程に進学。2022年3月に博士号を取得後、酪農学園大学・早稲田大学・国立感染症研究所にてポスドクとして研究を行いながら臨床にも携わっている。専門・得意分野は感染症、消化器、免疫疾患など。無類の猫好き。