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ねこの知能はどのくらい?

獣医師が監修しました
工藤 綾乃 先生

獣医師

頭のいい動物と聞いて、どんな動物を思いつくでしょうか。サル?いぬ?はたまたイルカ?

ではねこはどうでしょうか?この記事では、ねこがどれくらいの知能を持つのかについてご紹介します。

知能の指標

脳の重さは知能の一つの指標であり、脳の大きさは知的達成度と関連があるという報告があります。そこで、体に対する相対的な脳の大きさを数値で表した「脳化指数」によって、いろいろな動物の脳の相対的な大きさを比べることができます [4]。

 

ただし、脳の大きさと大脳皮質に存在する神経細胞(ニューロン)の数が比例しないという事実からも、脳化指数が必ずしも知能の高さを示すわけではありません。そもそも「知能」が何を指すのかも曖昧ということもあり、あくまでも脳化指数は知能を比較する上での一つの目安に過ぎません。

実際、ねこの体の大きさに対する脳の大きさは、いぬよりも小さいですが、脳の大脳皮質という認知や情報処理を担う部分はいぬに比べて大きく、いぬの約2倍の神経細胞(ニューロン)が存在しているという報告があります。

 

ねこの知能

では、ねこは人でいうと何歳児くらいなのでしょうか。様々な意見がありますが、いぬもねこも人間の2~3歳児程度の知能レベルに相当するといわれています。この根拠となっているのは、ピアジェという児童心理学者が提唱した発達段階論です。いぬやねこが人間の子どもの発達段階のどの段階の行動をとるか、という考え方に基づいています。

ではねこがどのようなことができるのか、またはできないのかを見てみましょう。

自分の名前を聞き分けられるのか?

ねこが自分の名前と、それによく似た発音の単語を聞き分けることができるかという実験が日本で行われました。この結果、家庭で飼われているねこは、自分の名前とそれ以外の単語を聞き分けることができるということが示されました。ただし、猫カフェのねこは、自分の名前と他の同居ねこの名前を識別することはなかったようです [1]。

数量比較能力

数を数える能力ではなく、全体的な感覚として多いか少ないかを認識する能力を数量比較能力といいます。生後すぐの乳幼児でも確認されている能力です [7]。

メキシコで行われた実験では、ねこは異なる数や大きさのエサを前にしたとき、その量を識別する能力があるということが明らかになりました [5]。

物理的関連性の理解能力

ヒモの先に結びつけられたおやつを、ねこがヒモを引っ張って手に入れることができるか、という実験についての報告があります。ヒモが一本ならねこはおやつを得ることができましたが、2本並行に並んだヒモのどちらかにおやつがついている場合、またはその2本のヒモが交差している場合だと、おやつのついているヒモを選ぶことができなかったそうです [2]。このことから、ねこは物事の関連性を理解することは苦手なようです。

判断能力

ねこは、危険な状態になる可能性があると判断すると素早く行動することができます。また獲物を捕まえるときにも、獲物をただ追いかけるだけでなく、状況に応じて待ち伏せをしたり、気づかれないようにわざと遠回りしたり、獲物を追いかけるときもコースを変えたりして、その場に最も適した行動を判断することができます。

記憶力

ねこの記憶力に関しては、異なる視点からいくつかの実験が行われています。作業記憶(ワーキングメモリ)という、ある仕事(例:本を読んだり、黒板に書かれた内容を写したり)をするために情報を一時的に保つ(話を理解するために登場人物を覚える、ノートに写すために黒板に書かれた言葉を覚える)能力をねこが持つのかを調べた報告があります。この結果では、特に目で見て覚える能力について、ねこは30秒ほどしか維持できないという結果が示されています [3]。一方、長期記憶に関しては、一度覚えたものを10分程度記憶しておくことができるということが報告されています [6]。

より生活に近い話でいうと、ねこは、動物病院や大きな犬のいるところなど、嫌いなことや場所、危険なものは特に強く記憶します。一度食べて具合の悪くなったものは絶対に食べない、病院に行くためにいつもキャリーケースに入れていると、キャリーケースを見ただけで逃げる、といったことも記憶の強さを表しています。

また、一度できたことや偶然起こったことを覚えていて、同じようにすることも記憶力があるからこそです。ドアを引っかいていたら開いたという経験から、同じようにドアを開けるようになることや、机の上の箱が落ちて中に入っていた食べ物を食べることができたという経験から、何度も箱を落として食べ物を食べようとするといったこと、さらには飼い主に向かって鳴いたらおやつをくれたという経験から、おやつをおねだりするようになった、といったことに当てはまります。

こういった記憶力は、うまく利用するとねこを上手にしつけることができます。名前を呼んで反応したらなでてあげる、キャリーケースに入れて大人しくなったらおやつをあげる、といった行動+報酬(ねこが喜ぶこと)のセットを繰り返し、ねこに覚えさせておくと、病院に連れて行くときや災害時の避難のときなどに役に立ちます。

  

参考文献:

1. Domestic cats (Felis catus) discriminate their names from other words. A. Saito, et al. Sci Rep. 2019.

2. Domestic cats (Felis catus) do not show causal understanding in a string-pulling task. E. Whitt, et al. Anim Cogn. 2009.

3. Duration of cats' (Felis catus) working memory for disappearing objects. S. Fiset and F.Y. Doré. Anim cogn. 2006.

4. Modified formulas for calculation of encephalization: quotient in dogs. S.A. Saganuwan. BMC Res Notes. 2021.

5. More or less: spontaneous quantity discrimination in the domestic cat. O. Bánszegi, et al. Anim Cogn. 2016.

6. One-trial visual recognition in cats. V. Okujava, et al. Acta Neurobiol Exp. 2005

7. 幼児の数量的能力とその発達に関する考察. 上原 隆司. 名古屋短期大学研究紀要. 2017.

監修者

工藤 綾乃 先生 (獣医師)

札幌出身。地元の北海道大学を卒業後、関東の動物病院で勤務。腫瘍症例の治療に携わるなかで、より効果的な治療を見つけたいと考え、現在は麻布大学博士課程に在籍中。ねこと暮らしながら実験漬の日々を送っている。専門や興味のある分野は、がん、麻酔・集中治療、野生動物臨床など。