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肺炎について

獣医師が監修しました
工藤 綾乃 先生

獣医師

肺炎とは

肺炎とは、肺で炎症が起きている状態のことを言います。肺炎になると、空気中の酸素と体内で出た二酸化炭素の交換がうまくできなくなってしまいます。健康なねこが肺炎となるのはあまり多くないのですが、子ねこや高齢のねこ、また免疫力が弱っているねこでみられることがあります。一般的には、上部気道(鼻、咽頭、喉頭、気管など)の感染症で軽い呼吸器症状があった後に悪化して肺炎へと進行することが多いですが、前触れもなく急激に呼吸状態が悪化することもあります。

症状

肺炎を患ってしまったねこがどのような症状を示すのか見てみましょう。

・呼吸促迫

呼吸が荒くなり、回数が多くなる状態をいいます。肺がうまくはたらけないと、一回で取り込める酸素の量が減ってしまい、酸素量を補うために呼吸の回数が多くなります。ねこの正常な呼吸回数は1分間に15~40回程度なので、眠っているときなどの安静時の呼吸回数を数えてみましょう。

・開口呼吸

ねこが口を開けて呼吸することは異常な状態です。重度の呼吸困難に陥っている場合がありますので、すぐに病院を受診しましょう。

・疲れやすくなる

酸素を上手く取り込めないので、体を動かすとすぐに疲れてしまい、あまり動きたがらなくなることがあります。

・食欲不振

呼吸がうまくできず、苦しくて食欲がなくなることがあります。これに伴って体重が減ってしまうこともあります。

・咳、くしゃみ

上部気道に病原体の感染がある場合に出ることが多い症状です。ほか、目やにや発熱が見られることもあります。ただ、ねこは咳をあまりしない動物であり、したとしても音が小さく、人の咳の仕方とは異なり分かりにくいです。動画などでねこの咳を見ておくと気付きやすくなるでしょう。

肺炎になっていても、中には呼吸器症状が出ない場合もります。呼吸器以外の症状(元気がない、食欲がないなど)に変化がないか、日ごろから気を付けてあげましょう。

また、上記の症状を示す病気として、肺水腫、猫喘息、肺腫瘍などもあり、症状だけでは肺炎との区別が難しいことがあります。いずれにせよ、異常が見られた場合は病院で診断してもらいましょう。

 

原因

肺炎の原因によって、次のように肺炎の種類を分けることができます。

・細菌性肺炎

細菌のみの感染で起こることは少なく、ほかの呼吸器の問題(ウイルス感染、免疫疾患、腫瘍、誤嚥など)が引き金となって起こることが多いです。

・ウイルス性肺炎

猫風邪と呼ばれる上部気道感染の中で、ウイルス性のものが悪化した場合に起こります。原因となるウイルスには、猫カリシウイルス、猫ヘルペスウイルスなどがあります。

・真菌性肺炎

健康なねこでは真菌(カビ)によって肺炎になることはほとんどありませんが、免疫力が低下しているねこでは肺炎になることがあります。

・原虫性肺炎

主にトキソプラズマという原虫が原因となります。健康なねこでは感染しても症状を表さないことがほとんどですが、子ねこや免疫力の低下したねこで肺炎を起こすことがあります。

・誤嚥性肺炎

嘔吐したものや食べ物のカスなどが、食道ではなく誤って気管から肺に入ってしまった場合に起こる可能性があります。

・特発性肺炎

原因不明の肺炎です。アレルギーや寄生虫、真菌と関係するものもあります。

他、有毒ガスの吸引や、薬剤などが原因で肺炎が起こることもあります。

 

診断のために行う検査

肺炎を診断するためには、どのような検査を行うのでしょうか。

・聴診

肺の音(呼吸音)に異常が無いかを調べます。

・血液検査

ねこの健康状態や、炎症が無いかなどを検査します。ウイルス感染が疑われる場合は、より詳細な検査を行うこともあります。

・X線検査

肺や気管支に異常が無いかなどを調べます。X線検査では、肺は通常黒く写りますが、肺炎などの異常が起きていると白い陰影が写ります。

・CT検査

より詳細に肺などの器官に異常が無いかなどを確認します。検査をするためには全身麻酔が必要です。

・気管支洗浄検査

気管を洗浄して、洗浄液を顕微鏡で観察したり、培養検査などを行い、異常な細胞や細菌などの病原体が含まれていないかを調べます。

 

治療

症状が重篤な場合は、まずは症状を緩和させる対症療法をおこないます。呼吸がうまくできていない場合や、ひどい咳が続いているといった場合は、気管支を広げて呼吸をしやすくする薬や咳を止める薬を使う、酸素を吸入するといった方法があります。また、食欲がなくなっている場合は点滴などで栄養分や水分を補給してあげることもあります。同時に、肺炎の原因に対する治療を行います。

細菌、真菌、原虫が原因となっている場合は、抗菌薬、抗真菌薬、抗原虫薬などの薬を、ウイルス性肺炎の場合は抗ウイルス薬の他、インターフェロンという薬を投与することがあります。

また、アレルギーが疑われる場合は、炎症を抑えるためにステロイド剤を投与することもありますが、アレルギーの原因物質を取り除いてあげることが重要です。芳香剤やタバコの煙、ハウスダストなどが原因物質となっている可能性があります。

 

肺炎の予防

細菌、真菌、原虫などの感染によって起こる肺炎は、免疫力が低下したねこに起こりやすいのですが、免疫力の低下を引き起こす原因で特に注意したいのがウイルス感染症です。具体的には、免疫不全を引き起こす猫免疫不全ウイルス(FIV)猫白血病ウイルス(FeLV)、上部気道感染症を引き起こす猫カリシウイルス、猫ヘルペスウイルスなどが挙げられます。ワクチンが推奨されているウイルスに関しては、感染がおこる前にワクチンを接種することが推奨されます。

その他、病原体を保有している他のねこから感染する可能性をできるだけ下げるため、室内飼育を徹底することも有効な手段の一つです。免疫力を維持するためにしっかりとねこの栄養状態を維持し、ストレスをできるだけ減らしてあげること、アレルギーを引き起こす可能性のある物質(たばこ、ハウスダスト、芳香剤など)は出来るだけ取り除いてあげることも肺炎の予防に重要です。

 

参考文献:

1. Bacterial Pneumonia in Dogs and Cats: An Update. J.D. Dear. Vet Clin North Am Small Anim Pract. 2020.

2. Feline respiratory infections--a clinical review. R.C. Povey. Can Vet Jour. 1976.

監修者

工藤 綾乃 先生 (獣医師)

札幌出身。地元の北海道大学を卒業後、関東の動物病院で勤務。腫瘍症例の治療に携わるなかで、より効果的な治療を見つけたいと考え、現在は麻布大学博士課程に在籍中。ねこと暮らしながら実験漬の日々を送っている。専門や興味のある分野は、がん、麻酔・集中治療、野生動物臨床など。