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鼻炎について

獣医師が監修しました
工藤 綾乃 先生

獣医師

鼻炎とは

鼻の中の粘膜(鼻粘膜)に炎症がある状態を鼻炎といいます。鼻粘膜に炎症があると、腫れたり、鼻汁の量が増えたりするため、呼吸がしづらくなります。また、鼻粘膜が傷つくと、そこに細菌が感染し、症状が悪化する危険性があります。

炎症初期の段階では、サラサラした(水っぽい)鼻汁(鼻水)が出ることが多いですが、鼻炎が長引く(慢性化する)とねばねばした黄色や緑の鼻汁が出る場合があります。鼻汁のほかの症状としては、鼻づまりとそれによって呼吸が荒くなり、ズーズーという呼吸音が聞こえることもあります。また、鼻がつまることで呼吸がしにくく、さらに匂いが分かりづらくなるので、食欲がなくなってしまうこともあります。くしゃみや、涙や目やにがでる場合もあります。さらに、炎症が悪化したときには鼻(顔)の変形などが起こる可能性もあります。 

 

 原因

鼻炎の原因にはどのようなものがあるのでしょうか。

感染

ウイルス、細菌、真菌、寄生虫など、様々な病原体が鼻炎の原因となる可能性があります。ウイルス性、特にヘルペスウイルスによる猫ウイルス性鼻気管炎、カリシウイルスによる猫カリシウイルス感染症が鼻炎の原因の大半を占めます。細菌は、ウイルス感染によって鼻粘膜が荒らされたあとに感染することが多いです [1]。真菌ではアスペルギルス、クラミジア、クリプトコッカスなど、寄生虫では鼻ダニというダニの一種などが鼻炎の原因となることがあります。

異物

植物の種などを吸い込んでしまったり、薬品などの刺激臭を吸ってしまったりして鼻炎が起こることがあります。

腫瘍

鼻腔にできるできものは、良性のポリープのこともありますが、多くの場合は悪性の腫瘍です。種類としては、鼻腔内リンパ腫や腺癌、扁平上皮癌などがあります [3]。

高齢のねこで、鼻水や鼻血が片方の鼻だけから出ている場合には腫瘍が疑われます。

アレルギー

人間では、花粉やハウスダスト、ダニなどにアレルギーのある人は鼻水が出るなどの症状があらわれることがありますが、ねこでもアレルギーのある子がいます。鼻炎のほか、喘息や結膜炎も症状として出ることがあります [2]。

口の中の病気

歯周病の悪化などによって、口の中と鼻を隔てる骨が溶け、つながってしまった状態を口鼻腔瘻(こうくうびくうろう)といいます。この状態のねこでは鼻炎の症状が出ることがあります [1]。

先天性疾患

生まれつき、口の中の空間と鼻の穴とを隔てている口の天井の部分(口蓋:こうがい)に穴が開いている(口蓋裂)ねこでは、鼻炎を発症しやすくなります。

 

猫白血病ウイルス感染症や、猫免疫不全ウイルス感染症のねこでは、免疫力が落ちているために様々な病原体に感染しやすく、慢性的に鼻炎を起こしやすくなる危険性が高いです [1]。 

 

診断のために行う検査

鼻炎の診断では、次のような項目をチェックします。

鼻呼吸の確認

冷たいガラスを鼻に近づけて曇るかどうか、また綿を鼻に近づけて動くかどうかなどでチェックします。

鼻汁

粘度(さらさら、ねばねば)、色(透明、黄色、緑色など)、血が混じっていないかなどを確認します。また、両方の鼻の穴から鼻汁が出ているか、片方からかも診断に重要なポイントです。

顔の左右対称性

腫瘍などがある場合、顔が変形する場合があります。

結膜炎・涙の有無

病原体によっては結膜炎を起こすものもあります。また、涙が流れ出ていく鼻涙管という目の端にある管は鼻につながっているので、鼻炎でこの部分がふさがっているとねこが涙を流すことがあります。

口の中の異常の有無

口蓋裂や口鼻腔瘻といった病気がないかを調べます。

 より詳細に調べるために、X線検査やCT検査といった画像診断や、鼻腔鏡検査、鼻腔洗浄を行うこともあります。なお、これらの検査のうち、X線検査以外は通常全身麻酔を必要とします。

 

治療

症状が重く、呼吸が困難な状態になっている場合は、症状を落ち着かせるために、吸入器(ネブライザー)を使って鼻やのどに薬剤を噴霧して炎症を抑えます。

その後、鼻炎を起こしている原因に適した治療をおこないます。細菌・真菌・寄生虫が原因の場合は、それぞれ抗生物質、抗真菌薬、駆虫薬で治療し、腫瘍がある場合は、抗がん剤治療、放射線治療、または手術などで対応します。

 

予防

ワクチン接種によって、鼻炎を引き起こす病原体の一部に対して免疫力をあげることができるので、鼻炎の予防に有効です。ワクチンによっては病原体に感染することを完全に防ぐことができるわけではありませんが、もし感染したとしても軽症に抑えることができます。また、他のねこからの病原体の感染を防ぐために室内飼いにすることも効果的です。

鼻炎なんて大したことはないと放っておくと、重症化する恐れもありますし、原因が腫瘍などのすぐに対処しなければならない病気の可能性もあります。病院で診察を受けるときには手術が必要な状態だった、といったことにならないように、鼻炎の症状が見られたときには、早期に病院で診察を受けましょう。

 

参考文献:

1. Chronic Rhinitis in the Cat: An Update. N. Reed. Vet Clin North Am Small Anim Pract. 2020.

2. Dog and Cat Allergies: Current State of Diagnostic Approaches and Challenges. S.K. Chan and D.YM. Leung. Allergy Asthma Immunol Res. 2018.

3. Functional endoscopic sinus surgery in a cat with nasal tumor. M.C. Marchesi, et al. J Vet Med Sci. 2019.

監修者

工藤 綾乃 先生 (獣医師)

札幌出身。地元の北海道大学を卒業後、関東の動物病院で勤務。腫瘍症例の治療に携わるなかで、より効果的な治療を見つけたいと考え、現在は麻布大学博士課程に在籍中。ねこと暮らしながら実験漬の日々を送っている。専門や興味のある分野は、がん、麻酔・集中治療、野生動物臨床など。