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ねこの体重減少について

獣医師が監修しました
吉本 翔 先生

獣医師・獣医学博士

博士研究員(麻布大学・ペンシルバニア大学)

体重減少の原因

体重が減少する原因は大きく分けると、①栄養分の摂取不足(=ごはんが足りていないから体重が減る)、②栄養分を取り込んではいるがうまく利用することができない(=ごはんを食べているが体重が減る)、という2つです。それぞれどうして起こるのかを見てみましょう [1, 2]。

 

①の栄養分の摂取不足には、次のような原因があります。

ごはんの量・質が不十分

適切な量のごはんを与えられていない場合や、フードに含まれるカロリーや栄養分が少ないという場合が考えられます。

食欲がない

ねこの食欲が落ちてしまうときには、様々な原因が関連しています。内臓の病気だけではなく、関節炎や歯周病など、痛みが伴う病気、ストレスなども食欲低下の原因になります。

また、非ステロイド性抗炎症剤(NSAIDs)や抗生物質などの薬の中には、まれに胃腸を荒らしてしまい食欲が落ちてしまうものもあります [1]。

 

一方、②の栄養分を上手く利用できないという病態には、次のような原因があります。

食べた物を消化できない・栄養分を吸収できない

◯炎症性腸疾患

消化管に炎症が起こる、原因不明の病気。栄養の吸収不良による体重減少のほか、嘔吐や下痢も同時に生じることが多い。

◯消化管寄生虫

 一般的に、屋外で保護されたねこで感染していることが多い。外に出かけるねこも注意が必要。

◯慢性膵炎・膵外分泌不全

膵臓から消化酵素が分泌されにくくなり、食べ物の消化不全、栄養分の吸収不全が起こる。体重減少に加え、悪臭のする白っぽい便が出ることもある。

◯消化器型リンパ腫

高齢のねこでかかりやすい。ねこの消化管にできる腫瘍の中でもっとも一般的な腫瘍の一つ。

 

吸収した栄養分を利用できない

糖尿病

高齢で肥満のねこは糖尿病になるリスクが高い。糖尿病を発症するとインスリンが機能しにくくなり、栄養分をうまく利用できなくなる。

 

吸収した栄養分の利用率が増えている 

甲状腺機能亢進症

高齢のねこ(8歳以上)でかかりやすい。異常に分泌されるホルモンの働きによって代謝があがり、体重が減少する。

◯妊娠・授乳

 

他にも、高齢のねこがかかりやすい慢性腎臓病は、食欲不振、吸収不全、栄養分の利用率増加など様々な要因によって体重減少を引き起こす一般的な原因の一つです。

 

診断のために行う検査

原因を特定する上でまず考慮しなければならないポイントの一つは、ねこの年齢です。これは、年齢によってかかりやすい病気が変わるためです。また、多飲多尿や下痢、嘔吐が無いかなどの飼い主からの情報も診断には不可欠です。その他、以下のような検査を幅広く行います。

便検査

便の状態を観察したり、寄生虫や虫卵が混ざっていないかを確認します。

血液検査

血球数、血糖値、タンパク質量、腎数値など様々な値から、体重減少の原因を探ります。

尿検査

尿の比重や色、成分などから腎臓・泌尿器の異常がないか、糖尿病の疑いはないかなどを調べます。

エコー検査

腫瘍がないか、消化器に炎症が起きていないかなどを調べます。

ホルモン検査

甲状腺などのホルモン値を測定します。

 

適正な摂取カロリー

そもそもねこにとって適正な摂取カロリーはどれくらいなのでしょうか。以下の表を参考に、ご自宅のねこちゃんに必要なカロリーを確認してみましょう。大幅に足りない、超えている、のどちらもねこの健康にとって良くありません。

PET NUTRITION ALLIANCE (https://petnutritionalliance.org/cat.php?lg=en_US)

 

もし、食欲がなく摂取カロリーが足りていない、または必要カロリー量を摂取できているのに体重が減少している場合は、病院で検査を受けましょう。

体重が1か月で5%以上減っていたら注意が必要です。また、10%以上の体重減少がある場合には深刻な病気が隠れている可能性が高いです。例えば5 kgのねこが、1か月で4.5 kg以下になっている場合は、食欲や元気があっても獣医に相談しましょう。

 

自宅での注意

日ごろから体重が大きく変動していないか気にかけてあげることが大切です。

ねこの体重は、①ねこを抱っこして体重を測り、その後、②自分の体重を測り、③その差を計算する、ことで簡単に量ることができます。1か月に1回程度確認すると良いでしょう。

ねこは人と比べると体が小さいので、たった数百gの体重の変化でもねこにとっては大きな変化です。ボディコンディションスコアで痩せていると診断されたねこには、消化に良く、カロリーの高い食べ物を頻回摂取できるような環境を整えてあげると良いでしょう [1]。

参考文献:

1. The Cat: Clinical Medicine and Management. S.E. Little. 2012, p.1176-1181
2. Problem-Based Feline Medicine. D.G. Moore and J.B. Miller. 2006, p.301-329
3. Evaluation of Weight Loss Over Time in Cats with Chronic Kidney Disease. L.M. Freeman, et al. J Vet Intern Med. 2016

 

監修者

吉本 翔 先生 (獣医師・獣医学博士)

北海道大学卒業、東京大学大学院にて博士号取得。夜間救急病院や大学病院で多くの患者と向き合う中で、研究やテクノロジーにより獣医療をもっと発展させたいと考えるようになる。現在は、麻布大学(2021年〜)と米国ペンシルバニア大学(2018年〜)で研究員。専門や興味のある分野は、がん、免疫、人工知能、診断推論など。