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猫カリシウイルス感染症について

獣医師が監修しました
工藤 綾乃 先生

獣医師

猫カリシウイルス感染症とは

猫カリシウイルス感染症とは、その名のとおり、猫カリシウイルスというウイルスが原因の感染症です。猫カリシウイルスは、一般的にねこの口内や呼吸器で増殖します。

猫カリシウイルスに感染したねこの鼻汁、唾液、目やになどが感染源となるので、感染ねことのグルーミングや食器の共有などが原因で感染が起こることがあります [1]。

 

症状

猫カリシウイルスがねこに感染したときに引き起こす症状は様々ですが、最も特徴的な症状には次のようなものがあります [1]。

口内の潰瘍

初めに小さな水疱でき、それが破れることによって潰瘍になります。舌の端にできることが多いです。

目やに

鼻汁

これらの他、肺炎などの重篤な呼吸器症状を示す場合、また口内や呼吸器に症状が出たあと、跛行(はこう:足を引きずって歩く)の症状が出ることもあります。一方、感染しても症状を表さない場合もあります。

また、通常の猫カリシウイルスの株より病原性が強い強毒株も存在し、この株に感染すると、猫カリシウイルス感染症でよく見られる症状の他、発熱、潰瘍性皮膚炎(特に耳介や肉球)、黄疸などの全身性疾患を示し、最大で50%が死亡するということが報告されています。ただ幸いなことに、まだ日本では発生は報告されていません。

ねこの免疫力が正常であれば通常2~3週間で症状はおさまりますが、その後、症状はないもののウイルスを保有・排出して他のねこへ感染を広げるキャリアーとなる恐れがあります。キャリアーである期間はねこによって様々ですが、一部のねこでは生涯にわたってウイルスを排出します。

 

検査

口内の潰瘍など、特徴的な症状をもとに診断することもありますが、猫カリシウイルスに感染しているかどうかを確定するためには、主に次のような方法が用いられます。

PCR検査

口内ぬぐい液(スワブ)や血液などを用いて、カリシウイルスの遺伝子を検出します。

抗体検査

血液を用いて、ねこの体内にカリシウイルスに対する抗体があるかどうかを調べます。抗体は、カリシウイルスに自然に感染したり、ワクチンを打ったりしたあと数週間でねこの体内で作られます。そのため、感染とワクチンのどちらが原因で抗体ができたのか、また今現在感染しているのかを知ることはできません。

 

治療

残念ながら、猫カリシウイルス感染症に対する効果的な治療法まだありません。そのため、出ている症状を抑える対症療法が中心となります  [2]。

水分/栄養分の補給

カリシウイルス感染症による口内の潰瘍による口の中の痛みなどにより、食欲不振になることがあります。この場合、味やにおいの強いフードに変えたり、食欲増進剤を与えたりすることもあります。それでも水分や栄養分を十分にとることができない状態が長引いた場合は、輸液、食道チューブや胃ろうチューブなどによって強制的に水分や栄養分を与える必要があります。

鎮痛

病変によって生じている痛みを和らげます。

二次感染に対する治療

口内や呼吸器の症状が重症であると、その病変部位から細菌が感染する(二次感染)が起こる可能性もあります。この場合、抗生物質で予防・治療します。

インターフェロン

静脈注射で投与する薬で、猫カリシウイルス感染症に効果があるとされています。

 

予防

猫カリシウイルスは感染力がとても強く、健康に見えるねこでもキャリアーである可能性があります。また、ウイルスを排出しているねこを人が触り、その手で他のねこを触ることで感染を広げてしまうリスクもあります。このように、猫カリシウイルスとの接触を完全に避けることは難しいといえます。そのため、感染してしまったときのためにワクチンを接種しておくことが推奨されます。

猫カリシウイルスに対するワクチンは、全てのねこに接種すべきワクチンである「コアワクチン」の一つです。ワクチンを打っていれば、感染してしまっても症状を軽減することができます。注意したいのは、感染自体を防ぐことはできないという点です。症状はでないけれどもウイルスを保有、排出するキャリアーとなる可能性は依然として残るということを理解しておきましょう。

猫カリシウイルス感染症ワクチンを打つタイミングは、製品によって多少異なりますが、8~9週齢で1回目、そこから3~4週あけた12週齢ごろに2回目、さらに念のため、その後数週あけて3回目という流れです。その次は1年後、さらにその次からは3年に1回の頻度で接種することが推奨されています。

ワクチン接種のほか、ウイルスに接触する機会をできるだけ減らすことも予防に効果的です。感染している可能性のあるねこと接触しないように室内飼育をする、感染している可能性があるねこに触れた後は十分に手を洗い、使用した食器や布類は熱湯で数分間消毒するなどして感染を広げないようにしましょう。

また、一度感染して自然治癒したあとも、ねこの体内にウイルスは潜んでいる場合があります。このウイルスはねこの免疫力が下がったときに再活性化する可能性があるので、免疫不全を引き起こす病気(猫免疫不全ウイルス感染症、猫白血病ウイルス感染症)にかからないようにする、出来るだけストレスを少なくするといったことも意識してあげると良いでしょう。

 

参考文献:

1. Feline calicivirus. A.D. Radford, et al. Vet Res. 2007.

2. Potential Therapeutic Agents for Feline Calicivirus Infection. T.M. Fumian, et al. Viruses. 2018.

 

 

監修者

工藤 綾乃 先生 (獣医師)

札幌出身。地元の北海道大学を卒業後、関東の動物病院で勤務。腫瘍症例の治療に携わるなかで、より効果的な治療を見つけたいと考え、現在は麻布大学博士課程に在籍中。ねこと暮らしながら実験漬の日々を送っている。専門や興味のある分野は、がん、麻酔・集中治療、野生動物臨床など。