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猫白血病ウイルス(FeLV)感染症について

獣医師が監修しました
工藤 綾乃 先生

獣医師

猫白血病ウイルス感染症とは

レトロウイルス科の猫白血病ウイルス(Feline leukemia virus, FeLV)が原因の感染症で、その名の通り白血病の原因となります。また、白血病だけでなく、リンパ腫、貧血や免疫不全など、様々な症状を引き起こします。

現在はFeLVに対するワクチンや、FeLV感染を検出するための簡易検査が広く普及していることもあり、感染率は健康な飼い猫で数%未満と低く維持されています [1]。しかし、潜伏感染を起こしたり、感染から何年も経ってから白血病や腫瘍を引き起こすことから油断ができない病気です。

 

感染ステージと症状

FeLVに感染したあと、どのように病気が進行していくのでしょうか。少し難しいのですが、FeLV感染症には大きくわけて3つの経過があります [3]。

Abortive infection:不稔型

FeLVが体に入り込んだのち、リンパ節などで一時的にウイルスが増えるが、その後ねこの免疫によってFeLVの増殖が抑えられる。FeLVが増えたり、他のねこに移すことがなく、ウイルスを克服した状態。

Regressive infection:退行型

FeLVが体に入り込んだあと、ウイルスが全身に広がり、一時的に発熱や元気消失、リンパ節の腫れなどが生じる。この段階のねこは、主に唾液からFeLVを排出しており、他のねこに感染を広げる可能性がある。体の免疫反応により、数週間~数か月で全身にFeLVが広がっている状態は終息するものの、機能を失った状態のウイルスが体内にとどまる。この状態を潜伏感染と呼ぶ。潜伏状態では、他のねこへの感染は起こらない。しかし、潜伏感染状態のねこの免疫が低下したり、免疫を抑制する薬を飲んだりすると、FeLVは再活性化し症状を引き起こすことがある。

Progressive infection:進行型

FeLVがねこに感染した後、全身に広がり症状を引き起こす。退行型とはこの状態が持続するという点で異なる。ウイルスが持続的に体外に排出されるため、他のねこに感染を広げる可能性が高い。FeLVが骨髄に感染することで、血液をうまく作れなくなり貧血になったり、白血病やリンパ腫などの腫瘍が生じる可能性が非常に高くなる。また、関連して体重減少や神経症状なども生じる。

免疫が働かなくなること(免疫不全)により、健康なねこではかからないような病原体に感染してしまう「日和見感染症」も大きな問題となる。日和見感染症では、様々なウイルスや細菌、真菌や寄生虫などにより、歯肉炎、口内炎、鼻炎、肺炎などの症状が現れる。

 

FeLV感染症にどれだけかかりやすいかは、感染時の年齢に依存すると一般的にはいわれています。つまり、感染時に成熟していれば、体内からウイルスを排除する免疫力が備わっているので「進行型」となる可能性は低く、逆に子ねこ、特に4か月齢未満であると「進行型」になる可能性が高くなります。

 

 感染経路

FeLVは感染しているねこの唾液や母乳などの体液に含まれます。ウイルスを含む体液が、傷口や粘膜に触れてしまうと感染する可能性があります。次のような行動は、感染が起きる可能性があるので避けましょう。

 

子ねこがFeLVに感染した母ねこのミルクを飲む。

FeLVに感染したねことケンカをする、または毛づくろいをし合う。

FeLVに感染したねこと食器を共有する。

感染したねこの血液を輸血する。

 

他にも、FeLVに感染しているねこが妊娠すると、胎盤を通して子ねこが感染する可能性もあります [1]。

検査

感染に早期に気づくことで、普段の生活で気をつけるべき点が分かり、他のねこへの感染が広がるのを防ぐことができます。とくに、外によく出かけてしまうねこや、外で保護したねこでは検査を行なうとよいでしょう。

簡易検査キットを用いると、血液中のFeLVの有無を調べることができます [1]。感染してすぐのねこでは、体内のウイルス量が少なく、検査で見つけられない可能性があるので注意が必要です。検査結果が陰性でも、感染が疑わしい場合には期間を置いて何度か検査を繰り返す方が良いでしょう。

他にも、血液検査で貧血の有無や血球の数・状態を調べたり、骨髄の組織から骨髄の状態を調べたりすることもあります。

 

治療法

残念ながら、現在FeLV感染症に対する効果的な治療法はなく、現れた症状に対する対症療法が基本になります。

免疫力の低下により、細菌や、真菌、寄生虫などの感染が起こっている場合は、抗生物質や駆虫薬などの投薬を行ないます。

白血病やリンパ腫の発症が分かった場合には、抗がん剤治療を検討します。貧血が重度の場合には、輸血が必要になる可能性もあります。

FeLVに対する薬の研究も日々すすめられていますので、今後の研究に期待したいですね。

 

予防

病気が進行してしまうと深刻な状態になってしまうことや、効果的な治療法がないことから、FeLV感染症は予防がとても重要です。

ワクチン接種

多頭飼育をしているねこ、屋外に出るねこ、屋外に出るねこと接触する機会があるねこなどは特にワクチン接種が推奨されます。子ねこの場合はFeLVに感染すると重症化しやすいので、生後2ヶ月以降にワクチンの接種を検討しましょう。もし既に成猫の場合や、完全室内飼育でFeLVに感染したねこと接触する可能性がない場合は、必ずしもワクチンを接種する必要はありません。なお、感染後にワクチンを接種しても効果は期待できません。

室内飼育

特に免疫力の弱い子ねこの間は、屋外と行き来をしているねことの接触を避け、また外に出さないように注意しましょう。

 

 

 

参考文献:

1. Saunders Manual of Small Animal Practice (Third Edition). R.G. Sherding. P.115-125

2. Canine and Feline Infectious Disease. J.E. Sykes and K. Hartmann. P.224-238

3. Clinical aspects of feline retroviruses: a review. K Hartmann. Viruses. 2012.

 

監修者

工藤 綾乃 先生 (獣医師)

札幌出身。地元の北海道大学を卒業後、関東の動物病院で勤務。腫瘍症例の治療に携わるなかで、より効果的な治療を見つけたいと考え、現在は麻布大学博士課程に在籍中。ねこと暮らしながら実験漬の日々を送っている。専門や興味のある分野は、がん、麻酔・集中治療、野生動物臨床など。