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腎盂腎炎について

獣医師が執筆しました
長尾 乙磨 先生

獣医師

腎盂腎炎とは

腎臓は体の左と右に一つずつある臓器です。腎臓の中では、糸球体という老廃物を濾過するフィルターに血液を通すことで尿を生成しています。糸球体で生成された尿は集合管を通り、腎杯、腎盂で合流して尿管へ流れていきます。

腎盂腎炎は腎盂や腎杯に細菌が入り込んでしまったことで生じる感染性炎症性疾患を指します。

腎盂腎炎の原因は大きく分けて、①尿路からの感染、②血液からの感染、の2つにわかれます [1]。

尿路からの感染

腎臓と膀胱をつなぐ尿管を通って、腎臓への感染が起こります。その原因となる細菌の多くは外陰部から感染し、尿道、膀胱をたどって腎臓に感染します。細菌性膀胱炎、猫下部尿路疾患などで治療中の猫さんや、尿管閉塞で尿の流れの悪いねこは特に腎盂腎炎の発症リスクが高いと言われています。また、短期間での複数回の尿道カテーテルの設置なども腎盂腎炎発症のリスクを高めます。

血液からの感染

尿路からの感染に比べると非常に稀な原因です。膀胱や腎臓以外の臓器で重篤な感染が発生している場合に、血流に乗って細菌が腎臓に感染する可能性があります。

 

症状

腎盂腎炎は激しい症状が突然現れる急性腎盂腎炎と、軽度な症状が続く慢性腎盂腎炎に分かれます [1]。

急性腎盂腎炎

急性腎盂腎炎は、適切な治療が行われなかった場合には死に至る可能性のある疾患です。膿や、血液、粘液などの混ざった尿を頻回にするようになります。排尿時には激しい痛みを伴うことが多く、背中の曲がった背弯姿勢をとることも特徴の一つです。

また、全身性の症状として、発熱や食欲の減退、嘔吐、下痢または便秘などもみられます。これらの症状は数日から10日程度で一旦収まることもありますが、症状が出ている間に適切な治療をされなかった場合は慢性化してしまうことがありますので、異変に気づいた時には動物病院へ連れて行くようにしましょう。

慢性腎盂腎炎

食欲の軽度の低下や、疲れやすくなるなどの腎盂腎炎以外の疾患でもよく起こる症状や、微熱が反復的に繰り返される、少しだけお水を飲む量やおしっこの量が増えるといった極めて軽度な症状が多いです。これらの症状から腎盂腎炎を疑うことは難しく、気づいた時には末期の腎不全に進行していることが多いです。

 

診断のために行う検査

・身体検査

触診や心拍数、呼吸数、体温の測定などを行います。特に腎盂腎炎の急性期には、腹部の触診に対して痛がることが多いです。また、ねこの腎臓は体外から触診することができるため、腎臓が腫れていることがわかることもあります。

発熱や、お腹の痛みなど、これらだけでは腎盂腎炎を診断することはできませんが、身体検査は体の異変を疑うための重要な検査です。

・尿検査

尿検査では尿の中に含まれている成分(タンパク質やpHなど)の検査と、尿に含まれる細胞の検査を行います。尿路や腎臓での炎症を示唆する白血球や、細菌を確認できた場合、腎盂腎炎を疑って次の検査に進みます。

・尿培養

尿路、腎臓での細菌感染を疑う場合は尿培養を行い、感染している細菌の同定を行います。尿検査では顕微鏡で見た限り細菌が見つからなかった場合も、培養検査で細菌が確認されることがあります。また、培養検査では感染した細菌にどの抗生剤が効きやすいかを調べることができるので、治療方針を立てるための補助的な検査にもなります。

・X線検査

X線検査では腎臓の位置やおおまかな形を評価します。急性期では腎臓が腫れて大きくなっている様子が確認できます。また尿路造影剤を用いることによって、より鮮明に尿路の評価を行うことができます。

・エコー検査

エコー検査では腎臓の断面や形を評価します。エコー検査ではX線検査に比べてより詳細に腎臓の腫大や、腎盂が広がっている様子を評価することができます。また、腎盂の中に濁った液体(膿性の液体の可能性がある)が溜まっている様子が観察させることもあります。

 

治療

・抗菌薬(抗生剤)の投与

腎臓での感染が原因で症状が引き起こされているので、まず細菌の感染への治療が必要です。様々な種類の抗菌薬が販売されており、基本的には尿培養の結果から感染した細菌へ効果を発揮しやすい抗菌薬を選択して治療を行います。しかし、尿培養検査の結果が出るまで1週間ほど時間がかかるため、感染している菌を予想しながら治療を開始することも多いです。最低でも4週間は抗菌薬による治療を続けるべきだと考えられており、投与終了後に尿中の細菌が検出されなくなった場合に治療は終了となります。

しかし、腎盂腎炎は再発することも多い疾患であるため、治療終了後半年間は1〜2ヶ月に1回は尿検査・尿培養検査を行うことが勧められています [1]。

・尿量のコントロール

腎臓に感染した細菌が腎臓に定着してしまうことを防ぐために、利尿薬や静脈点滴によって尿量を増やす治療を行うことがあります。ただし、これは補助的な治療に過ぎず、根治を目的とした抗菌薬投与が第一に必要です。

腎盂腎炎は症状からのみ疑うことは難しい病気ですが、少しでも気になる症状がある場合には早めに動物病院を受診しましょう。

 

参考文献:

1. 獣医内科学 小動物編 日本内科学アカデミー編 文英堂出版

執筆者

長尾 乙磨 先生(獣医師)

山形県出身。東京大学を卒業後、同大学博士課程に在籍中。大学附属動物医療センターで診療活動を行っており、専門は消化器内科。学生時代からアメリカンフットボールをやっていることもあり、いぬねこの筋肉や脂肪、栄養学を専門として研究に奮闘中。