健康診断のすすめ

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工藤 綾乃 先生 獣医師
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話せない家族のからだを知る

具合が悪い時や体に変化を感じた時、私たちは言葉や行動で家族や周囲の人、お医者さんに伝えることで健康を維持しています。しかし、ねこはその不調を私たちに言葉で伝えることはできません。そのため、ねことの生活では「彼らの体調の変化を日々の行動から察知すること」や「体調を崩さないよう、病気の予防や知識を持つこと」も、私たちの大切な役割です。

しかし、全てのねこが同じように体の不調を行動に表してくれるわけではありません。気にかけていても、中には体調不良をなかなか表現してくれない子がいたり、症状の進行が緩やかで変化に気付きづらかったり、病気自体が外見や行動では気づけないものであったりと、症状の出ない内に進んでしまうことも少なくありません。

健康診断では、そんなねこの体調を客観的な検査を通じて知ることができます。病気の早期発見に繋げるだけではなく、今健康でいることの確認ができる大切な機会です。 

 

ねこの1年は人間の4年

ねこの1歳半は人間の20歳に相当し、その後1年ごとにおよそ4歳ずつ歳を重ねると言われます。つまり、春夏秋冬の季節が移り変わると、私たち人間にとっては1年が過ぎるのと同等の体の変化が起こるということです。そして、私たち人間と同様に年齢を重ねるにつれて様々な病気のリスクが出てきます。

猫のライフステージ

※換算年齢はあくまで目安です。

 

健康診断の内容

では、実際に健康診断ではどのような検査が実施されるのでしょうか。健康診断の目的によって、検査の項目が変わります。例えば若いねこや保護されたばかりのねこでは、先天性の病気や感染症がないかどうか見てあげることが大切です。高齢のねこでは、年齡とともにリスクが高くなる、ホルモンの病気や腫瘍などが隠れていないか、より詳しく調べていきます。

血液検査

血液からわかる各臓器の状態や、ホルモンの状態、感染症の有無などを、数値や陽性/陰性で評価します。

X線検査

外からは見えない各臓器や骨格の状態を、X線を通して写し出した画像で評価します。骨の異常や胸・腹部臓器の評価に利用される単純X線検査や、造影剤を利用し消化管や尿路の評価を行う造影X線検査、多数の画像を重ねることでより精密な評価が可能となるX線CT検査などがあげられます。

エコー検査

外からは見えない各臓器の状態をリアルタイムの画像で評価します。心臓の動きや状態を評価する心臓エコー検査や、お腹の臓器の状態を評価する腹部エコー検査などが挙げられます。

 

健康診断を役立てるポイント

せっかく健康診断を受けたなら、そのメリットを最大限に活かすために次の6つのポイントを押さえましょう。

1. 定期的に受ける

過去の状態からどう変わったかを知ることは体調を把握する上でとても重要です。

2. 前回の検査との変化に注目

前回から悪くなったのか、変わらないのか、良くなったのか、しっかり経過を追いましょう。

3. 結果は保管する

大切な診断結果は現物、あるいはデータでしっかり保管しましょう。

4. 気になる点は相談する

体調をしっかり知るために、分からないことは遠慮なく相談、質問をしてアドバイスをもらいましょう。

5. 再検査、精密検査を怖がらない

検査を何度も受けることはもちろん不安です。必要な追加検査は獣医師と相談した上で、納得して受けられるようにしましょう。

6. できることから生活改善

健康に大切なのは短期的な改善ではなく、コツコツと長く継続して続けることがほとんどです。無理せず続けられることから始めましょう。

健康診断を活用して、ねこの健康寿命を伸ばしましょう。

参考文献
1. 2021 AAHA/AAFP Feline Life Stage Guidelines. J. Quimby, et al. 2021.
この記事を監修した人
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工藤 綾乃 先生 獣医師

札幌出身。地元の北海道大学を卒業後、関東の動物病院で勤務。腫瘍症例の治療に携わるなかで、より効果的な治療を見つけたいと考え、現在は麻布大学博士課程に在籍中。ねこと暮らしながら実験漬の日々を送っている。専門や興味のある分野は、がん、麻酔・集中治療、野生動物臨床など。

発行・編集:株式会社トレッタキャッツ

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