不妊手術について
避妊手術、去勢手術とは
みなさんはねこに避妊手術や去勢手術と呼ばれる不妊手術について考えたことはありますか。避妊手術はメスのねこ、去勢手術はオスのねこに行う、繁殖しないようにするための手術のことです。健康なねこに麻酔をかけてキズをつけるなんてかわいそうと感じられるかたもいらっしゃるかもしれませんが、これらの手術はねこが人と暮らしていく中でどうしても必要になってくる大切な手術です。
避妊手術の概要
メスの不妊手術は避妊手術と呼ばれます。避妊手術では卵巣のみ、あるいは卵巣と子宮両方の摘出を行います。このときおへその下あたりの皮膚を切開し、腹筋を切ってお腹を開けて、腎臓近くのお腹の深いところにある卵巣を見つけます。そして卵巣のみあるいは卵巣と子宮の両方を摘出します。
去勢手術の概要
オスの不妊手術は去勢手術と呼ばれます。オスは肛門の近くに丸く膨らんだ陰嚢をもち、その中に精巣が存在しています。手術では陰嚢の中央を切開し、左右の精巣の摘出を行います。ただし、まれに陰嚢の中に精巣がなく、皮下脂肪の中やお腹の中にあることがあり、手術のまえに精巣の位置を確認する必要があります。
不妊手術の時期
早いねこでは生後4、5ヶ月で発情がきてしまうこともありますが、基本的に不妊手術は生後半年ごろに実施することが多いです。あまりに早い時期に手術をすると、骨の成長を阻害してしまう可能性が指摘されているからです。ねこは季節繁殖動物といって、繁殖可能となるタイミングは単純な月齢だけでなく日照条件などで変わってくると言われています [1]。
手術の目的
手術の目的としては大きく3つあり、①発情行動を抑制する、②望まない妊娠を避ける、③性ホルモンが関与する病気を予防する、といったことがあげられます。
①発情行動を抑制する
発情行動は主に、オスでは部屋中いろんなところに排尿するマーキング行動、メスでは夜中鳴くような行動があります。これらは人と暮らしていく中では望ましくない行動ですよね。不妊手術を行なうことで、ホルモン関連の発情行動を抑えることができます。
②望まない妊娠を避ける
ねこが脱走してしまったときなど、人の見ていないところで妊娠してしまうリスクを、手術を行うことで避けることができます。
③性ホルモンが関与する病気を予防する
性ホルモンが関与する病気として乳腺腫瘍というものがあり、乳腺腫瘍という病気はその手術する時期によってがんの発生率が変わってくることが報告されています。
避妊と乳腺腫瘍の関連
避妊手術をしたメスのねこと、しなかったねこで乳腺腫瘍の発生率を比較した報告があります。それによると、初回の発情より前に避妊手術したねこでは、しなかったねこに比べて乳腺腫瘍の発生率が91%低下、初回の発情後2回目の発情前に手術したねこでは86%低下、2回目の発情以降に手術したねこでは11%低下するという結果が得られたそうです。ねこの乳腺腫瘍は多くが悪性で、みつかった時点で転移を起こしていることが多いため、腫瘍ができてから手術しても再発してしまうことがあります。
また、乳腺腫瘍がみつかるのは多くが高齢のねこで、乳腺腫瘍のほかに腎臓病や心臓病など加齢による病気を発症しているために、手術ができない、あるいは抗がん剤治療に耐えられないようなこともあります。ですからねこに子どもを産ませる予定がないのであれば、早期の避妊手術をしてあげることで、病気のリスクを下げることができます。ねこと長く健康に暮らしていく方法の一つとして考えてみてはいかがでしょうか [2]。
不妊手術をするデメリットとは?
不妊手術を行うとデメリットとして太りやすくなることがあげられます。なぜかというと精巣や卵巣を摘出することで性ホルモンの分泌がなくなり、その影響で代謝が落ちるといわれているためです。したがって、手術前と同じ食事をとった場合、摂取カロリーが変わらない一方で消費カロリーが減ることで、太りやすくなってしまうのです。肥満を予防するためには、消費カロリーが減ることを見越して、術後の食事の量や種類に気を配るとよいでしょう。病気の予防を目的として不妊手術をした結果、肥満という病気になってしまわないように心掛けるとよいかもしれません。
2. Association between ovarihysterectomy and feline mammary carcinoma. B Overley et al. J Vet Intern Med. 2005.
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