頭を振る、耳を壁に擦り付けるなどの症状が出たら注意!ねこの中耳炎の症状と治療法とは?

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工藤 綾乃 先生 獣医師
目次

中耳炎とは

耳は、大きく外耳(外界から鼓膜までの耳介、外耳道)、中耳(鼓膜とその内側にある鼓室、鼓室と鼻腔を結ぶ耳管)、内耳(中耳よりもさらに奥、聴覚や平衡(へいこう)覚に関与する装置を含む)の三つの構造に分けられます。中耳炎は、中耳の部分に炎症が起こっている状態を指します。

中耳炎は、外耳への感染によって生じた炎症(外耳炎)が中耳にまで広がったり、異物(植物の種など)が耳に入ってしまうことや耳掃除が原因で鼓膜が破れてしまったりすることで起こります。また、ねこでは中耳にできるポリープ(良性の腫瘍)なども中耳炎の原因として知られています。ほかにもねこでは、上部気道の感染症が、耳管を通じて中耳に広がって中耳炎となることもあります。

中耳炎がひどくなると、さらに奥の内耳にまで炎症が広がることもあります(内耳炎)。中耳や内耳の中には頭部を制御する神経が通っているため、中耳炎や内耳炎が原因で神経症状がでることもあります。

 

症状

以下のような症状が見られた場合は、中耳炎を疑って病院で検査を受けましょう。

頭を振る、耳を壁などにこすりつける

耳の痛みや痒みから、このような行動をとることがあります。激しく耳を掻くことで耳に傷がつくと、耳血腫(耳介に血液が貯まって膨れた状態)になることもあります。

外耳道に膿性の耳垢がみられる

黄色くドロッとした液体が耳に認められる場合、中耳に炎症が起こっており、破れた鼓膜から外耳にまで液体が出てきているという状態の可能性があります。悪臭がすることもあります。

眼瞼下垂(まぶたが下がってくる)、瞳孔の開きが左右で異なる、など

交感神経や、顔面神経という顔の筋肉を動かす神経に影響が及んでいると生じる症状です。交感神経に異常がある場合に認められる病態を、ホルネル症候群といい、瞳孔の開き具合が左右で異なったり、まぶたが垂れさがったりするといった症状が見られます。

口を開けるのを嫌がる、口や顔の筋肉を動かせず唾液がたれる

顔の筋肉を動かす顔面神経が中耳炎によってダメージを受けることで起こる症状で、顔の片側だけ麻痺することが多いです。麻痺が生じている側の口は、閉じられずに垂れ下がったような状態になり、ごはんを上手く食べられない、水を上手く飲めないといった症状が認められます。また、見た目として顔が左右非対称に歪んでいるように見えます。

聴力低下

中耳にたまった液体や、鼓膜が破れていたり、腫瘍ができていたりすることが原因で、聴力が低下している可能性があります。

頭を傾ける、まっすぐ立てない、ふらつく、旋回する、など

中耳炎から内耳炎にまで悪化しており、平衡感覚をつかさどる器官に影響が出てきている状態です。嘔吐が見られることもあります。

 

検査

中耳炎は悪化してしまうと後遺症が残ってしまうこともある病気です。異常が見られた場合はすぐに病院で診断を受けましょう。

病院では、まず外耳炎の有無や神経症状の有無を確認します。中耳炎や、中耳炎が悪化して内耳炎も併発している場合に認められる神経症状は特徴的なので、診断の有力な指標となります。

また、中耳にたまった液体などに細菌がいないか、くしゃみや目やに、鼻汁などの上部気道感染症が見られないかも検査します。

耳の病気の検査では、下図のように耳鏡を用いて耳の奥を直接見て、炎症が起こっていないか、鼓膜が破れていないかなどを確認することもあります。

さらに中耳や内耳を詳しく調べる場合は、X線検査やCT検査、MRI検査などを行うこともあります。CT検査やMRI検査では、全身麻酔をかけることが一般的ですが、よりくわしく耳道内部の構造を評価することができます。

 

治療法

細菌感染が疑われる場合は、抗生物質や炎症を抑える薬を投与します。その他、炎症の程度にもよりますが、中耳の洗浄を行うこともあります。症状が進行している場合や薬に反応しない場合、鼓膜を切開して鼓室を洗浄する、腫瘍を切除するなどの手術が必要となることもあります。

なお、神経にダメージがある場合は治療が困難で、中耳炎が治っても、残念ながら神経症状は残ってしまう可能性があることを理解しておきましょう。

 

予防法

中耳炎は外耳炎から進行することが多いです。そのため、定期的に耳掃除をすることで、中耳炎のリスク下げることができます。ただ、やりすぎると耳の中を傷つけてしまい、逆に中耳炎のリスクを上げてしまうので、獣医師のアドバイスに従いましょう。

中耳炎の治療は、早ければ早いほど予後が良くなる可能性が高くなります。普段から、耳に垢がたまっていないか、普段と異なるにおいや色をしていないかをチェックし、それらに異常が見られた場合や、ねこの頭の位置や動かし方がいつもと違うと感じた場合は、速やかに検査を受けるようにしましょう。

 

この記事を監修した人
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工藤 綾乃 先生 獣医師

札幌出身。地元の北海道大学を卒業後、関東の動物病院で勤務。腫瘍症例の治療に携わるなかで、より効果的な治療を見つけたいと考え、現在は麻布大学博士課程に在籍中。ねこと暮らしながら実験漬の日々を送っている。専門や興味のある分野は、がん、麻酔・集中治療、野生動物臨床など。

発行・編集:株式会社トレッタキャッツ

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