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脱毛について

獣医師が執筆しました
長尾 乙磨 先生

獣医師

脱毛に気づいたら

ご自宅でねこを触っているときに、ふと毛が薄くなっていることに気づいたり、一部分だけ毛がなくなっていたことはありますか?特に、かゆみを伴う脱毛だと心配かと思います。この記事では、ねこの脱毛を見つけた時に疑うべき原因について解説していきます。

 

毛が抜けているときのチェックポイント

・全身の毛が均等に抜けているのか、一部が抜けているのか?

どこの毛がどのように抜けてしまっているか、は診断を行う上でとても重要な情報です。例えばアレルギー性皮膚炎に関連した脱毛では全身の毛が抜けていきますが、局所的な感染によって脱毛が起こる場合は感染している部位のみ毛が抜けていきます。また、体の一部での脱毛の場合は、毛が抜けている場所も診断に有用な情報となります。

・体が痒そうな様子はないか?

ねこは体が痒い時には掻いたり舐めたりといった仕草がみられます。特にねこの舌はざらざらしているため、頻繁に舐めることによって脱毛が起こりやすいです。普段グルーミングをする頻度よりも明らかに増加した場合は舐めている箇所が痒くて気になっていることが疑われます。

・外に出かけることがあるか?

外に出かけることがあるねこは、外の草むらや他のねことの接触によって感染性疾患をもらって帰ってきてしまうことがあるので注意が必要です。

 

主な脱毛の原因

・細菌、真菌感染(膿皮症、皮膚糸状菌症)

脱毛を起こす細菌感染性疾患として膿皮症が挙げられます。膿皮症は毛包、皮膚の表面や深部に細菌が侵入し感染することで、水疱(水ぶくれ)や膿疱(膿が溜まった水ぶくれ)が皮膚にできてしまう疾患です。最も膿皮症が起きやすい部位は頭部であり、脇や腹部にできることもあります。ほとんどのねこは痒みの症状が生じます [1,2]。

脱毛を起こす真菌感染性疾患としては皮膚糸状菌症があげられます。真菌とは、いわゆるカビの一種です。Microsporum属や、Trichophyton属のような真菌が皮膚に感染することによって発症します。健康なねこにはこのような真菌が感染することは多くないですが、免疫力の弱い子ねこや、老ねこ、免疫抑制剤を飲んでいるねこでの発生が知られています。また、ねこの糸状菌症は人へ感染することも知られているので、一緒に住んでいる家族も注意が必要になります [1]。

・寄生虫(疥癬、ノミアレルギー性皮膚炎)

ねこで脱毛を引き起こす寄生虫疾患として疥癬、ノミアレルギー性皮膚炎が挙げられます。

疥癬を引き起こすネコショウセンコウヒゼンダニは感染すると表皮の中にトンネルを作って生息しています。主に頭部から感染が始まることが多く、徐々に全身へと広がっていきます。痒みはとても強く、重症の場合は元気や食欲がなくなってしまうこともあります [1]。

ノミアレルギー性皮膚炎は、ねこの体に寄生しているノミに刺された際に、ノミの唾液に含まれる抗原に反応して皮膚炎が起きてしまう疾患です。ノミ予防をしていないねこや、外に出かけることのあるねこは特に注意が必要です。

・アレルギー性皮膚炎

ねこでは上記に挙げたノミアレルギー以外にアトピー性皮膚炎、食物アレルギーがみられます。

① アトピー性皮膚炎

アトピー性皮膚炎は、人においてもその発症メカニズムは完全には解明されていませんが、ねこに関してもアトピー性皮膚炎の病態はほとんどわかっていません。頭頸部での発生が多く、強い痒みを伴います。発症年齢は3歳未満と比較的若いねこでの発生が多いです [3]。

② 食物アレルギー

食物抗原に対してアレルギー反応が生じて、皮膚の掻痒感や下痢などが出てしまう病態です。牛肉や乳製品、魚、小麦や大豆など様々な食物がアレルギーの原因となると言われていますが、アレルギー発症の原因はねこさんによってそれぞれ違うので非常に診断が難しい疾患です。頭頸部や、耳、お腹などでの症状が多く、強い痒みを伴います [4]。

・過剰なグルーミング(心因性脱毛)

ねこは神経質な動物であるため、環境の変化、欲求不満や不安などの精神的ストレスによって、過剰にグルーミングを行ってしまうことがあります。前述の通りねこの舌は特にざらざらしているため、過剰にグルーミングしてしまうことで舐めた部分の毛が抜けてしまいます。ねこが舐められない部分の毛は抜けないという特徴があります [5]。

・薬の影響(ステロイド)

ステロイドを長期間服用しているねこでは、左右対称性もしくは全身性に毛が薄くなっていくことがあります。これはステロイドの副作用で、毛根の活動が休止してしまっているために起こります。一般的にはステロイドの服用を中止、もしくは使用量を減量することによって改善します。

 

診断のために行なう検査

・皮膚検査

脱毛や水疱、膿疱などができている部位での細菌、真菌、寄生虫感染の確認を目的に皮膚検査を行います。脱毛部にスライドグラスを押し当てるスタンプ法や、脱毛部位周辺の毛を抜く抜毛検査、病変部位の皮膚を一部削る皮膚掻把などによって得られた検体を顕微鏡で観察することにより感染性疾患の診断を行います。また、真菌についてはウッド灯検査という、紫外線を当てて真菌の感染を確認する検査を行うこともあります。ここで感染性疾患を除外することで、アレルギー性皮膚炎や心因性脱毛の診断へ進むことができます [1]。

・血液検査

血液検査では赤血球、白血球、血小板などの血球成分の個数の評価や、血中に含まれる酵素やタンパク質の量の評価により、全身状態の評価を行います。また、アトピーを疑うねこさんでは血中での様々な抗原に対する抗体の量を測ることもありますが、これだけでアトピーの診断を確定することはできず、血液検査は診断のための補助的な検査となっています。

・除去食試験

除去食試験は、特定のアレルギー反応が起きやすい食物抗原が入っていない除去食を給餌して皮膚症状が改善するかどうかを確認する検査です。一般的には8週間ほど続けてみて、皮膚症状が改善された場合は食物アレルギーの可能性が高いです [1]。

ねこの脱毛は、原因によってはQOL(生活の質)を下げてしまう疾患が隠れている可能性もあります。脱毛の程度が軽度であっても、体を掻く頻度や舐める頻度が増えるなど気になる症状があれば動物病院を受診ください。

 

参考文献:

1. 獣医内科学 小動物編 日本内科学アカデミー編 文英堂出版

2. Feline superficial pyoderma: a retrospective study of 52 cases (2001–2011). Hui W Yu, Linda J Vogelnest. Vet Dermatol. 2012.

3. Atopic dermatitis in cats and dogs: a difficult disease for animals and owners. Natalie Katharina Yvonne Gedon, Ralf Steffen Mueller. Clin Transl Allergy. 2018.

4. Critically appraised topic on adverse food reactions of companion animals (7): signalment and cutaneous manifestations of dogs and cats with adverse food reactions. Thierry Olivry, Ralf S Mueller. BMC Vet Res. 2019.

5. Underlying medical conditions in cats with presumptive psychogenic alopecia. Stephen E Waisglass, Gary M Landsberg, Julie A Yager, Jan A Hall. J Am Vet Med Assoc. 2006.

執筆者

長尾 乙磨 先生(獣医師)

山形県出身。東京大学を卒業後、同大学博士課程に在籍中。大学附属動物医療センターで診療活動を行っており、専門は消化器内科。学生時代からアメリカンフットボールをやっていることもあり、いぬねこの筋肉や脂肪、栄養学を専門として研究に奮闘中。