猫喘息について

獣医師が監修しました
工藤 綾乃 先生

獣医師

ねこの喘息とは

ねこの喘息とは、肺に空気を送る気管支にアレルギー性の炎症が起きる病気です。何らかの吸引物に対し、ねこの体内で免疫反応が起き、再びその吸引物が入ってきた時には炎症反応が生じ気管支が細くなってしまい、呼吸が苦しくなります。ねこの1-5%が発症すると言われているように、比較的発生頻度の高い病気なので注意が必要です [1]。

 

原因

ねこが吸引する可能性があるものであれば、何でも原因となりえます。具体的には、タバコの煙や家のクリーニング剤、スプレー剤、花粉、かび、ダニ、暖炉などの煙などが挙げられます。時には食べ物が原因となることもあります。これらの物質に対して過剰な免疫反応が起きることで、気管支に炎症が起きてしまいます。

喘息になりやすいねこの種類や性別などはわかっておらず、どのねこでも発症してしまう可能性があります。

 

症状

・咳

・努力呼吸

 胸の動きがいつもより大きくなる

・口を開けて呼吸する

・呼吸の回数が増える

 安静時の呼吸数が1分間あたり40回を超えると異常の可能性あり

・嘔吐

 

診断のために行う検査

・身体検査

 肺の音を聞いたり、呼吸が苦しそうではないかを評価します。

・血液検査

 血液の数値から炎症反応が見られるかを確認し、喘息以外の病気がなさそうか確認します。

・X線検査

 肺のX線画像を撮ることで、喘息がありそうかどうか評価することができます。

・エコー検査

 喘息以外の病気がなさそうか確認します。

・CT検査

 X線検査だけでは評価が困難な肺の構造を、より詳細に評価できます。ただし、全身麻酔が必要となるため、必ず行われる検査では有りません。

・気管支鏡検査

 喘息の診断を確定するためには、実際に気管の状態を評価したり、気管支の細胞を検査する必要があります。ただし、全身麻酔が必要となるため、必ず行われる検査では有りません。

 

治療

治療は、ねこの症状や重症度などから決定されます。 主な治療法として、炎症を抑えてくれるステロイド剤と、細くなった気管支を広げてくれる気管支拡張剤が使われます。これらのお薬は吸入薬も開発されているため、必要に応じて使い分けることができます。

 

早期発見のためには

ねこの喘息は4-8歳で診断されることが多いですが、「そういえば、前から時々咳をしていた」という飼い主さんもいます。喘息は徐々に進行してしまう病気ですので、ねこが咳の様な症状をした場合は早めに動物病院に相談してくださいね。

 

参考文献: 

1. Feline Asthma: Diagnostic and Treatment Update. Trzil EJ, Vet. Clin. North. Am. Small. Anim. Pract. 2020.

監修者

工藤 綾乃 先生 (獣医師)

札幌出身。地元の北海道大学を卒業後、関東の動物病院で勤務。腫瘍症例の治療に携わるなかで、より効果的な治療を見つけたいと考え、現在は麻布大学博士課程に在籍中。ねこと暮らしながら実験漬の日々を送っている。専門や興味のある分野は、がん、麻酔・集中治療、野生動物臨床など。