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ねこの血尿

獣医師が監修しました
工藤 綾乃 先生

獣医師

血尿とは

通常、尿は透明で薄い黄色です。しかし、尿に血液が混ざるとピンク色や赤橙色に変化し、混ざる量が多い場合には鮮やかな赤色や茶褐色になります。これが血尿です。血尿は、排尿跡の染みやトイレ以外の場所での粗相、臭いなどで気付きます。また、ねこの陰部や周囲の毛に血液汚れが付着していることもあります。血尿を疑う際は必ず、ねこの体もチェックしましょう。血尿と同時に頻尿の症状があらわれることも多くありますので、トイレに行く頻度も観察しましょう。

血尿と共に確認すべきこと

血尿を見つけたら、以下のことを確認すると良いでしょう。

When

いつした血尿なのか?

Where

どこに血尿があったのか?

What

血尿の他に排便や正常な排尿、嘔吐などがあったか?

Who:どのねこが血尿をしたのか?…多頭飼育の場合)

How

どのように血尿をしたのか?(姿勢、排尿にかかる時間、血尿のタイミング・頻度)

How much

どのくらいの量の排尿をしたのか?何か所にしたのか?

これらを確認した上で、可能であれば自宅でした尿を持参して、動物病院を受診しましょう。獣医師がWhy:原因を診断するために有益な情報となります。

 

原因

尿は、腎臓で血液からつくられ、尿管を通り、膀胱に溜められ、尿道から排泄されます。この尿路のどこかで出血が起こると血尿になります。血尿が生じる原因にはどのようなものがあるのか、見ていきましょう。

ちなみに、血尿と同じように赤い尿が出る病態として、血色素尿があります。中毒や免疫の病気などで、急速に赤血球が壊され(溶血)、血液の成分が尿に混じって排泄されることで生じます。

膀胱炎

ねこに多い血尿の原因は膀胱炎です。膀胱炎は、結石性、細菌性、特発性の3つに分類されます。

〈結石性膀胱炎〉

尿中のミネラルが溶けきれずに結晶化し結石になることで、膀胱粘膜を傷つけておきる膀胱炎です。

細菌性膀胱炎〉

細菌が尿道を通って膀胱に侵入し、膀胱内で炎症を起こしてしまう病態です。

〈特発性膀胱炎〉

膀胱に原因が特定できない炎症がある状態で、ストレスや飼育環境が関与していると考えられています。

この3つは同時に起こり、相互に悪化させる恐れもあります。膀胱炎は再発が多いため、症状がよくなったあとも予防のケアが必要です。

尿道閉塞

尿道に結石などが詰まることで、尿が出せなくなってしまう病態です。膀胱炎によって生じた沈殿物が尿道に詰まってしまうこともあります。命に関わる病態のため、救急対応が必要です。排尿しづらいのに無理していきむことが長く続くと、骨盤の後ろ側に膀胱が移動し、尿道が蛇行して難治性の排尿障害を招くこともあります。

腫瘍

腎臓や膀胱に腫瘍が生じると、腫瘍からの出血により血尿が出ることがあります。なかなか血尿の原因がわからない場合には、腫瘍が隠れている可能性もあるので全身的な検査を検討しましょう。

 

他にも、雄ではペニスの傷や雌では子宮・膣の病気で尿に血が混じることもあります。ねこが屋外で生活する場合は、交通事故や転落などによる膀胱の外傷によって血尿になることもあります。

 

血尿があるときの検査

身体検査

全身状態を把握し、膀胱を触診して尿のたまり具合や硬さなどを確かめ、外陰部に問題がないか視診します。

尿検査

血尿の有無だけでなく、見た目では分からない尿の質を評価します。治療経過の評価や検診のためにも必要です。尿検査は定期的に行なう検査なので、自宅で採尿できれば、一番ねこの負担を抑えることができます。ただし診察時に膀胱に尿が溜まっていれば、尿道カテーテルや膀胱穿刺により採尿可能です。

尿培養検査

細菌性膀胱炎が疑われる場合には、細菌培養同定・薬剤感受性試験を実施することもあります。増えてしまっている菌の種類や、効きやすい抗生剤の種類を知ることができます。

X線検査

腎臓と膀胱の位置や外形を評価します。特に、結石や腫瘤の有無を評価するために有効です。ただし、内部構造や尿道は評価が困難なので、造影剤を用いて尿路を可視化する場合もあります(尿路造影検査)。

エコー検査

腎臓と膀胱の内部構造を評価します。小さな結石や腫瘤も検出にも向いています。

CT検査

尿路を含む全身の構造を3Dで精密に評価します。全身麻酔が必要ですが、X線検査やエコー検査よりも多くの情報を得られるので、尿路閉塞や腫瘍、外傷を疑う場合は選択肢になるでしょう。

血液検査

血色素尿や腎臓疾患など全身に関わる病気の際に有効です。

 

採尿および尿の持参方法

尿検査には新鮮できれいな尿が最低1~2ml必要です。排尿姿勢の際にトレーをお尻の下に差し込み、尿を回収しましょう。直接採尿が難しい場合は、トイレに尿がたまるように工夫しましょう。トイレが猫砂の場合は、砂の量を少なくし、尿が吸水されにくくしましょう。システムトイレの場合には、下層のペットシーツを裏返すか、食品用ラップを敷くことで尿を回収できます。尿を動物病院に持っていく際は、きれいな容器やチャック付きポリ袋などに入れるとよいでしょう。尿量が少ない場合や複数回採尿を試みても難しい場合は獣医師に相談しましょう。

治療

膀胱炎の場合は、消炎鎮痛剤や止血剤を使用して症状を改善しながら、原因に対し以下のように治療します。それぞれの治療を組み合わせて行なうこともあります。

結石性膀胱炎

水飲み場を増やし、ウェットフードを与えて飲水量を増やすことが重要です。食事療法やサプリメントによる体質改善も有効でしょう。

細菌性膀胱炎

適切な抗生剤を使用します。

特発性膀胱炎

ストレスを軽減し、飼育環境を整えることが重要です。例えばストレス軽減作用をもつ食事やサプリメントを試し、騒音や来訪者、同居のねことのトラブルなど疑わしいストレス因子を取り除きます。

尿路閉塞の場合は、閉塞物を解除する救急処置をしてから、集中治療を開始します。また、膀胱・尿道の位置が解剖学的に異常な場合は外科的に整復する必要があるでしょう。腫瘍の場合は、外科適応になる場合とならない場合や化学療法が有効な場合など症例により様々なので、ねこの全身状態を考慮しながら最適な治療を考えていきます。

 

動物病院受診のタイミング

血尿は異常のサインであり、そのまま様子をみることは危険です。特に出血量が多い場合や尿が出ていない場合、うずくまって痛がっている場合、ぐったりして元気食欲の低下がある場合はすぐに動物病院を受診しましょう。日頃から一日の排尿回数や排尿姿勢を観察しておくことで、血尿以外の排尿異常にも気が付きやすくなります。

  

参考文献:
1. Retrospective interview-based long-term follow-up study of cats diagnosed with idiopathic cystitis in 2003-2009. Eggertsdóttir AV, et al. J Feline Med Surg. 2021 Oct;23.
2. The effect of a therapeutic urinary stress diet on the short-term recurrence of feline idiopathic cystitis. Naarden B, et al. Vet Med Sci. 2020.
3. Recurrence rate and long-term course of cats with feline lower urinary tract disease. Kaul E, et al. J Feline Med Surg. 2020 Jun;22.

監修者

工藤 綾乃 先生 (獣医師)

札幌出身。地元の北海道大学を卒業後、関東の動物病院で勤務。腫瘍症例の治療に携わるなかで、より効果的な治療を見つけたいと考え、現在は麻布大学博士課程に在籍中。ねこと暮らしながら実験漬の日々を送っている。専門や興味のある分野は、がん、麻酔・集中治療、野生動物臨床など。