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甲状腺機能亢進症の食事

獣医師が監修しました
工藤 綾乃 先生

獣医師

甲状腺機能亢進症とは

甲状腺という、甲状腺ホルモンを作り出す臓器が異常に活性化してしまう病気を甲状腺機能亢進症といい、内分泌系の病気のうち、ねこでよく見られる病気です。

甲状腺ホルモンは、代謝を上げる(エネルギーを作り出す)、心臓のはたらきを調節する、神経系の機能を調節する、成長や発達を促す、などを始めとして、体の様々な機能に影響を及ぼします。そのため、甲状腺機能亢進症によって甲状腺ホルモンが過剰に分泌されると、異常に興奮したり(攻撃的になるなど)、ごはんを食べているのに痩せてしまったり、嘔吐や下痢が出たりと、いろいろな症状が出てくることがあります。

 

甲状腺ホルモンと食事の関係

甲状腺ホルモンはヨウ素を原料として体内で作られます。

食べ物や飲み物に含まれるヨウ素は消化管から吸収され、その後大部分が甲状腺に取り込まれて貯蔵されます。この貯蔵されたヨウ素がもととなって甲状腺の中で甲状腺ホルモンが作られ、血中に放出されます。

ヒトではヨウ素を取りすぎると甲状腺機能亢進症になる可能性もありますが、ねこの場合はヨウ素の取りすぎで甲状腺機能亢進症となる場合はほぼなく、甲状腺の腫瘍が原因となる場合がほとんどです。

 

食事療法

甲状腺機能亢進症の治療法には、薬を投与したり、甲状腺を手術で取り除いたりする方法があります(放射性ヨード治療という方法も海外では行われることがありますが、日本では行われていません)。

それらに加え、普段ねこが食べるフードを甲状腺機能亢進症のねこ用のものに変更する食餌療法という治療法があります。

治療用のフードでは、上で述べた甲状腺ホルモンの原料となるヨウ素の量が制限されており、このフードを継続して与えることで過剰量の甲状腺ホルモンが作られにくくなります。実際に、こういった療法食によって甲状腺機能亢進症の症状が改善したという報告もされています。

ただし、甲状腺ホルモンはある程度体内に蓄えられているので、ヨウ素を制限した食事に変えたからといって、すぐに効果が出るわけではありません。もともとの程度の差も影響するので差はありますが、2~6か月続けることが必要です。

また、長期的にヨウ素を制限した食事を続けることがねこに及ぼす影響については、まだ十分に解明されていません。

 

食事のみでのコントロールが難しい場合も

残念ながら、すべてのねこで食事療法だけで症状の改善がみられるわけではありません。甲状腺機能亢進症と併発している病気が症状に関係している場合もありますし、そもそもねこが療法食を食べてくれない場合もあります。

気を付けなければならないのが、療法食以外のものを与えてはならないという点です。療法食以外のたべもの(おやつなど)にヨウ素が含まれていると、治療の妨げになってしまいます。

甲状腺機能亢進症の症状が見られた場合は、まず病院に連れて行って原因を明らかにすることが第一です。その後獣医師と相談し、ねこと飼い主双方にとってより良い治療方針を決めることが望ましいですね。

 

参考文献

1. 2016 AAFP Guidelines for the Management of Feline Hyperthyroidism. 2016.

2. Effect of Feeding an Iodine‐Restricted Diet in Cats with Spontaneous Hyperthyroidism. T.Y. Hui, et al. J Vet Intern Med. 2015.

3. ヨウ素と甲状腺. 宮井 潔. 栄養学雑誌 (1993)

監修者

工藤 綾乃 先生 (獣医師)

札幌出身。地元の北海道大学を卒業後、関東の動物病院で勤務。腫瘍症例の治療に携わるなかで、より効果的な治療を見つけたいと考え、現在は麻布大学博士課程に在籍中。ねこと暮らしながら実験漬の日々を送っている。専門や興味のある分野は、がん、麻酔・集中治療、野生動物臨床など。