ねこの爪切り

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工藤 綾乃 先生 獣医師
目次

爪切りの必要性

ねこの爪は前足に5本ずつ、後ろ足に4本ずつあり、自由に出し入れできます。これらの爪は敵をひっかくためだけにあるのはなく、獲物を捕らえるため、木に登るため、方向転換するため、バランスをとるためなど、様々な役割をはたしています。

ねこは爪を自分でとぐので、爪切りは必要ないのでは?と思う方もいらっしゃるかもしれません。しかし、爪をとぐのは爪の外側の古い層をはがし、鋭く保つためです。

このように爪が鋭いままだと、カーテンやカーペットに爪が引っかかって爪が折れてしまったり、手足を痛めてしまったりすることもあります。

また、高齢のねこや爪とぎをあまりしないねこは、巻き爪となって爪が肉球に刺さり、痛みや炎症をおこすこともあります。

尖った爪は人に対しても危険があり、ねこと遊んでいるときや、ねこを抱いていて、ふいに飼い主の体の上から降りるときなどに飼い主がケガをしてしまう可能性があります。さらに、ねこにひっかかれると、ねこから人にパスツレラ菌という細菌が感染し、リンパ節が腫れたり発熱や頭痛を起こしたりする「猫ひっかき病」にかかってしまうリスクもあります。

爪切りを定期的におこなうことで、このようなリスクを避け、人とねこの両方の安全を守ることができるのです。

 

ではどのくらいの頻度で爪切りをした方が良いのでしょうか?

目安は3週間から1か月に1回です。ただ、子ねこは爪が伸びるスピードがはやいのでもう少し頻繁に、そして高齢のねこや爪とぎをあまりしないねこは、古い爪が残り、爪が分厚くなるのでこまめにチェックしてあげましょう。

 

自宅での爪切り

爪切りに慣らす

ほとんどのねこは、爪を切られるのが好きではありません。というより足先を触られるのが好きではありません。しかし、だからと言って無理やり爪を切ろうとしてはいけません。ねこが一度爪切りを嫌なものだと覚えてしまうと、次からは爪切りを見ただけで逃げてしまうようになる可能性もあります。

そのため、段階を踏んですこしずつ爪切りに慣れさせていくのが良いでしょう。まずはねこがリラックスしているときに足や爪に触れて、足先に触られることに徐々に馴れさせていきます。毎日少しずつスキンシップをとることを繰り返し、慣れてきたら爪切りを当ててみて、いやがったら諦める、というのを慣れるまで繰り返しましょう。

いざ爪を切るときには、時間をかけず素早く、ねこにとってできるだけ負担の少ないようにし、ねこが嫌がるそぶりを見せたら無理強いせず、その時はあきらめましょう。

ねこ用爪切り

爪切りは、ペット専用の爪切を使用しましょう。人とねこでは爪の形が異なるので、人用の爪切りを使うと、ねこの爪が割れてしまうこともあります。

ねこ用の爪切りには、ハサミ型とギロチン型の2種類があります。人によりますが、ギロチン型の方が爪をつぶすことなく切れるので扱いやすいかもしれません。

爪切りの方法

ねこの爪を切るときの体勢は人・ねこによって様々ですが、ねこが安心できる体勢を心がけましょう。後ろからねこを抱っこし、膝に座らせて爪を切る方法や、ねこがうつ伏せになっているところにそっと覆いかぶさるようにするといった方法もあります。

姿勢が安定したら、ねこの手の爪の付け根の硬い部分を自分の指で、ねこの爪の根本の血管が見えるまで押し出します。爪がピンク色に変わっている「クイック」と呼ばれる部分から血管と神経が通っているので、その深さまで切ってしまうとねこが痛がり、出血してしまいます。また、後ろ足は前足より血管が分かりにくく、前足より先端に近いところに血管と神経が通っていることに注意しましょう。いずれも、先端のとがった部分を2~3 mm切るだけで十分です。

ねこの負担ができるだけ少なくなるよう、一本の爪に対し、一度のカットで素早く終わらせましょう。

全部の爪を一気に切れなくても、日を分けて数本ずつ切れれば十分です。もし血が出てしまった場合は、爪の先をガーゼや布で押さえて止血します。しばらくしても出血が止まらない場合は動物病院へ連れて行ってあげましょう。 

参考文献
1. Cat-scratch Disease. S.A. Klotz. Am Fam Physician. 2011
この記事を監修した人
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工藤 綾乃 先生 獣医師

札幌出身。地元の北海道大学を卒業後、関東の動物病院で勤務。腫瘍症例の治療に携わるなかで、より効果的な治療を見つけたいと考え、現在は麻布大学博士課程に在籍中。ねこと暮らしながら実験漬の日々を送っている。専門や興味のある分野は、がん、麻酔・集中治療、野生動物臨床など。

発行・編集:株式会社トレッタキャッツ

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