鼻血やいびきに要注意!ねこの鼻腔内腫瘍について。
鼻腔内に多い腫瘍とは
鼻腔内腫瘍は、鼻腔と副鼻腔にできる腫瘍のことを指します。
ねこの鼻腔内腫瘍は、腫瘍全体の1~8.4%を占めます。鼻腔内腫瘍の90%以上が悪性です。腫瘍の種類として多いのはリンパ腫で、鼻腔内腫瘍のうち最大で約50%を占めます。
次いで癌腫や腺癌、扁平上皮癌などの発生が多くあります。鼻腔内腫瘍は転移が起こる確率は少ないですが、局所の侵襲性が強い腫瘍です。つまり、鼻の組織や骨などを破壊し、進行すると頭蓋骨にまで達することもあります。
症状
鼻腔内腫瘍は外からは発見しにくいため、症状に気づいたときには侵襲が進行している可能性が高いです。以下のような症状が見られた場合には、出来るだけ早く病院で検査を受けましょう。
鼻汁・鼻出血
鼻腔内腫瘍の症状として最もよく見られる症状です。膿(うみ)や血液が混じることもあります。特に、片方の鼻のみに症状が出ている場合には要注意です。鼻血の原因には腫瘍の他、外傷や感染症、歯の問題などもあります。鼻血が頻繁に出るようであれば病院で検査を受けましょう。
くしゃみ
くしゃみもアレルギーや呼吸器の感染症など、他の病気でもよくみられる症状ですが、鼻腔内腫瘍でも見られます。アレルギーや感染症の治療を行なってもくしゃみが収まらない場合は詳しい検査を進める必要があります。
いびき
普段は静かに寝ているねこがいびきをかくようになった場合、腫瘍が鼻腔をふさいでいる可能性があります。起きているときにも、すぐに疲れやすくなった(上手く呼吸ができないため生じる可能性がある)などの症状が見られないかも確認しましょう。
顔をこする
腫瘍が気になって、地面や家具、飼い主などに顔をこすりつけることがあります。
顔の変形
鼻の中で腫瘍が大きくなると、顔の筋肉や骨を押し広げ、顔が変形することがあります。顔全体が腫れる、顔が左右非対称になる、鼻の形がおかしくなる、といった症状がみられます。
神経症状
鼻腔腫瘍が頭蓋骨にまで侵襲し、脳に影響を及ぼすと、発作や行動の変化などの神経症状を示すことがあります。
診断のために行う検査
顔面に異常が見られないか、鼻呼吸に異常がないかや、血液検査の他、以下のような検査を実施することがあります。
画像診断(X線、CT検査など)
CT検査では、腫瘍が鼻のどこまで侵襲しているかまで詳細に調べることができます。
鼻鏡検査
鼻の中を直接見る検査です。
組織生検
鼻腔腫瘍の一部を採り、鼻の中のできものが腫瘍かどうか、そして腫瘍であるのであれば、腫瘍の種類を調べます。
治療
リンパ腫とリンパ腫以外の腫瘍では、治療戦略が大きく異なります。リンパ腫の場合には、抗がん剤治療が治療の第一選択になります。注射タイプまたは飲み薬タイプの抗がん剤やステロイド剤で、リンパ腫の進行を抑える治療を行ないます。また、病態によっては放射線治療を検討する場合もあります。
リンパ腫以外の鼻腔内腫瘍では、放射線治療・手術・化学療法を組み合わせて治療を行ないます。
放射線治療
鼻腔内腫瘍の場合の標準的な治療法として推奨されています。麻酔でねこを眠らせ、放射線を腫瘍にあてます。治療には全身麻酔が必要であり、定期的に何度も行う必要があります。また、周囲の正常な組織に影響が生じる可能性があります。
手術
腫瘍を直接手術で取り除くこともありますが、手術のみで治療するというよりは、放射線療法と組み合わせて行うことが多いです。
化学療法
いわゆる抗がん剤治療です。こちらの治療法も、抗がん剤のみで治療するより、他の治療法と組み合わせる場合が多いです。
腫瘍、とくに悪性の場合、痛みを伴うことも少なくありません。ねこができるだけ苦しまずに暮らしていけるよう、痛みを和らげる治療を行うこともとても大切です。気になる症状がみられた場合には、早めに病院を受診するようにしましょう。
2. Comparison of CT features of 79 cats with intranasal mass lesions. S. Bouyssou, et al. J Feline Med Surg. 2021.
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