急性腎障害

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原田 優眞 先生 獣医師
目次

急性腎障害とは

急性腎障害とは、腎臓が障害を受けてしまい上手く働けなくなってしまう状態のことを言います。腎臓自体に問題が起きている場合もあれば、その他の問題によって腎臓が障害されている場合もあります。

急性腎障害が生じると、元気や食欲が無くなったり、吐き気が出ることがあります。重症の場合には、腎臓で尿が作れなくなる可能性もあります。急性腎障害の原因や程度によっては亡くなる可能性も高く、その確率は約50%とも報告されています。気になる症状がある場合には、病院で診察を受けることをおすすめいたします [1]。

 

原因

では、急性腎障害はどのような原因で起きるのでしょうか。

異物・毒物の摂取

ユリ科植物、ぶどう、レーズン、不凍液(エチレングリコール)など

好奇心旺盛なねこでは、これらのものを身近に置いておくと食べてしまう可能性が十分にあるため、ねこの近くには置かないようにしましょう。また、家に観葉植物がある場合には、ユリ科のものではないかどうか確認しておくことも大切です。

尿の排泄障害

結石や腫瘍などによる尿道閉塞

尿管閉塞尿管や尿道が詰まると、尿を排泄できなくなります。尿が排泄できないことで腎臓に負荷がかかり、急性腎障害が生じます。

低血圧、血流量の低下

脱水、麻酔、内服薬の影響など

腎臓はもともと、血液の豊富な臓器です。麻酔や薬の影響で、腎臓に流れる血液が減ってしまうことが腎障害のリスクとなります。 

細菌感染

腎盂腎炎、敗血症など

血液中の細菌感染や、細菌性膀胱炎などの尿の通り道の感染が腎臓に影響することがあります。細菌感染が起きやすいような免疫力が落ちてしまう病気が隠れていないか?細菌性膀胱炎などの感染性疾患がないか?といった点を、把握しておくことが大切です。

 

症状

急性腎障害の症状は、突然生じることが特徴です。元気食欲の低下、嘔吐、尿量の低下といった症状が、急性に現れた場合には注意が必要です。症状のみでは急性腎障害を診断することは難しいため、疑わしい状態の時にはしっかり検査を受けるようにしましょう。

 

検査

急性腎障害を疑う時には、自宅での様子に関する問診が重要となります。症状の経過、中毒の原因となる物質の摂取歴、おしっこの様子などは必須の情報です。普段のおしっこの量も分かるといいですね。病院で行なう検査項目には、次のものが考えられます。

・血液検査

血液検査では、腎臓の数値の測定を行い障害の程度を判断します。その他の数値に異常がでていないかも、原因を知る手がかりになります。

・X線検査、エコー検査

X線検査やエコー検査では、腎臓自体に異常があるのか?その他の臓器に問題がないのか?おしっこの通り道に異物(結石や腫瘤など)が詰まっていないか?といった点を確認します。

・尿検査

尿検査では結石の成分や泌尿器の感染、尿の濃度などを調べることができます。もし新しいおしっこが出ているようならば、尿を持参すると検査がスムーズに進むかもしれません。

 

〈尿のとり方〉

猫砂をトレーに入れたタイプのトイレの場合には、ねこがおしっこの姿勢になったら薄いトレーのようなものをお尻の下に差しこみ尿を回収しましょう。トレーは必ずきれいに洗い、水気をよく切ってから使用してください。システムトイレの場合は、下段にペットシーツの代わりに食品用ラップをひいておくことで回収ができます。

治療

急性腎障害の原因が突き止められれば、原因に応じた治療を行なっていきます。具体的には、細菌感染に対する抗生剤の投与や、尿の流れを悪くしている結石の除去などです。 点滴治療は急性腎不全の時の大事な治療法の一つです。脱水などによって腎臓への血液の流量が減っている場合には、水分を補ってあげることが重要です。 重度の腎障害のためおしっこが作れなくなってしまった子では、透析治療も視野にいれる必要があります。しかし、現状ではどの病院でも行える治療ではなく、専門病院など限られた施設のみ実施されています。

 

予後は?

急性腎障害の予後は原因によって様々ですが、約50 %が亡くなってしまうとも言われる怖い病態です。中毒物質が原因の腎障害で、おしっこが出なくなってしまったねこでは予後が非常に悪いと報告されています [2]。

中毒物質をねこの身近に置かないことが大切です。

参考文献
1. Acute kidney injury in cats and dogs: A proportional meta-analysis of case series studies. S Legatti et al. PLoS ONE. 2018.

2. Acute intrinsic renal failure in cats: 32 cases (1997–2004). S Worwag and C Langston. JAVMA. 2008.
この記事を監修した人
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原田 優眞 先生 獣医師

広島出身。北海道大学を卒業後、関東の動物病院で犬・猫・エキゾチック動物などの診療に従事。犬だけではなく、いろんな動物の医療が充実するといいなと思ってます。興味のある分野はエキゾチック動物、野生動物、血液など

発行・編集:株式会社トレッタキャッツ

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