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ねこの慢性腎臓病について

獣医師が執筆しました
工藤 綾乃 先生

獣医師

慢性腎臓病とは?

腎臓は、血液から尿を作り、体で不要になった老廃物や毒素を体外に排泄する役割を持っています。腎臓にダメージが蓄積し正常に働けなくなった状態を腎不全と呼び、症状が長期間続くと慢性腎臓病と診断されます。慢性腎臓病は高齢のねこで多い病気ですが、若くても腎臓へのダメージが蓄積した場合(泌尿器感染、尿路閉塞、中毒物質の摂取など)には慢性腎臓病の状態となることもあります  [1,2,3]。

 

 

慢性腎臓病の症状

慢性腎臓病で最初に気づく症状としては、多飲多尿(水を飲む量、おしっこの量が増える状態)や尿の色が薄くなるなど、尿に関連した変化が見られます。これらの変化は、腎臓の機能が落ち尿をうまく濃縮できなることで生じます。

 

慢性腎不全が進行すると、脱水や食欲不振・嘔吐、さらには貧血や体に溜まった毒素による神経症状(尿毒症)と重篤な症状が生じます。

 

慢性腎臓病の診断

血液検査

慢性腎臓病の診断のためには、血液検査が不可欠です。腎臓関連の数値(BUN, クレアチニン, リン)の測定や、腎不全に伴う貧血が生じていないかなどのチェックを行ないます。また、通常の血液検査だけでは判断が難しい場合には、腎不全のより早期に上昇が認められるSDMAという数値の測定を検討する場合もあります。

尿検査

尿に感染が起きていないかを確かめたり、尿をどのくらい濃縮できているかを評価するために尿検査を行ないます。

画像検査

エコー検査では、腎臓の形を評価するために有用です。とくに、腎不全が急に進行した場合には、腎臓への感染や腎臓腫瘍、尿管閉塞など隠れた疾患がないか確認が必要です。

 

慢性腎臓病のステージ分類

慢性腎臓病と診断された場合、IRIS(国際獣医腎臓病研究グループ)が推奨しているステージ分類がしばしば参考にされます  [7]。ステージ分類はクレアチニンやSDMAの値、尿の状態や血圧の数値を参考に行われますが、一度の測定で判断するのではなく定期的に繰り返し評価することが必要です。

 

慢性腎臓病の治療

現時点では、失われた腎機能を完全に回復させる治療法は見つかっていません。慢性腎臓病の治療は、血中の老廃物をスムーズに体外に排泄できるよう手助けをしたり、腎不全の進行をおだやかにすることが目標となります。

点滴治療

慢性腎不全によって尿量が多くなると、身体の水分が失われることで脱水が生じ、さらに腎臓に負担がかかるという悪循環に陥ります。脱水を予防するためには、水分の摂取量を増やしたり、適切な点滴(静脈点滴、皮下点滴)を行ってあげることが効果的です。点滴は老廃物を排泄する手助けにもなります。

 

 

食事療法

また、腎臓にかかる負担を減らすためには、蛋白や塩分の含有量に配慮された療法食に変えるといった食事療法が検討されます。詳しくは以下の記事をご覧ください。

慢性腎臓病の食餌

 慢性腎臓病はねこでとても多い病気です。一度失われた腎機能は回復がむずかしく、早め早めから腎臓のケアをはじめていきたいですね。

 

参考文献:

1. Chronic Kidney Disease in Aged Cats: Clinical Features, Morphology, and Proposed Pathogeneses. C A Brown et al. Vet Pathol. 2016.

2. Chronic kidney disease in dogs and cats. J W Bartges. Vet Clin North Am Small Anim Pract. 2012.

3. Feline CKD: Pathophysiology and risk factors--what do we know? B S Reynolds and H P Lefebvre. J Feline Med Surg. 2013.

4. Prevalence and classification of chronic kidney disease in cats randomly selected from four age groups and in cats recruited for degenerative joint disease studies. C S Marino et al. 2014.

5. Survival in cats with naturally occurring chronic kidney disease (2000-2002). L M Boyd et al. J Vet Intern Med. 2008.

6. Prognostic Factors in Cats with Chronic Kidney Disease. J N King et al. J Vet Intern Med. 2007.

7. 日本腎泌尿器学会、 犬と猫の慢性腎臓病の治療、 参照日: 2021.12.15

執筆者

工藤 綾乃 先生 (獣医師)

札幌出身。地元の北海道大学を卒業後、関東の動物病院で勤務。腫瘍症例の治療に携わるなかで、より効果的な治療を見つけたいと考え、現在は麻布大学博士課程に在籍中。ねこと暮らしながら実験漬の日々を送っている。専門や興味のある分野は、がん、麻酔・集中治療、野生動物臨床など。