高齢猫にとって望ましい環境、高齢猫でありがちな問題
ねこの「高齢」は何歳から?
ねこの平均寿命は、「令和2年 全国犬猫飼育実態調査」によると15.45歳であると報告されています。では、ねこが「高齢」といわれるのは何歳からなのでしょうか?一般的に、ねこは10歳を超えると高齢期であるといえます。人に換算すると約60歳以上となります。
人と同様に、ねこも歳をとると若いころと比べて身体能力や体力が落ちて病気やケガをしやすくなります。また高齢になるとかかりやすい病気もあります。
高齢猫でありがちな問題
高齢のねこほどかかりやすくなる病気がいくつかあります。代表的なものを記載します。
代謝性疾患
甲状腺機能亢進症、糖尿病など
慢性腎臓病
口腔内疾患
歯周病、歯根吸収など
関節炎
腫瘍
聴力や視力の低下など
それまでとは異なり、夜に活動するようになった、よく鳴くようになった、グルーミング(毛づくろい)の頻度が異常に増えた・減った、トイレに行く回数が増えた・減った、などといった行動の変化がみられる場合、何らかの病気が原因である可能性があります。食欲の変化や行動の変化が無いか日ごろからよく観察し、気になるところがあったときには、「高齢だから仕方がない」と決めつけないようにして、病院で検査を受けましょう。
高齢猫にとって望ましい環境
高齢のねこでも毎日を気持ちよく過ごせるようにするには、どのような点に気をつければよいのでしょうか。
トイレや寝床の場所
高齢になると、一般的に筋肉量の減少による運動能力が落ちるのに加え、関節炎などによる痛みで、若い時には軽く上がれたようなところでも上がりにくくなる、または上がれなくなることがあります。そのため、トイレや食事場所、ベッドに行くのに階段を上り下りしなければならない場合は、設置場所を一階に変える、複数個所に用意するといった配慮が必要です。また、ねこがお気に入りの高い場所に飛び乗れなくなったら、階段やスロープを作ったりして、ねこが自分で安全にお気に入りの場所にたどり着けるように補助してあげることも良いでしょう。
暖かい場所
ねこは暖かい場所で休むのを好みます。やわらかく、暖かく、清潔なベッドを準備してあげましょう。
フード
歳をとると、食べ物を消化する能力も低下してきます。また、口腔内の疾患のため今までの食餌が食べづらくなってしまうことがあります。そうなると栄養を上手く取り込めず、痩せ型になり、ボディコンディションスコア(BCS)が低くなってしまうことがあります。この場合、噛みやすい柔らかいフードや、栄養分、特にタンパク質が豊富に含まれているフード(慢性腎臓病のねこの場合は獣医師に相談する必要がある)などを検討したほうが良い場合があります。また、慢性腎臓病や肥満、高血圧などの病気にかかっているねこでは、通常のフードとは別の療法食に変更する必要があることもあります。
フードを変更する際に気を付けるべき点は、一気にこれまで食べていたフードから新しいフードに換えないようにすることです。特にずっと同じフードを食べてきた猫の場合、いきなりフードが変わるとごはんを食べなくなる可能性があります。いつものフードの横に別の容器に入れて置いてみる、いつものフードに少し混ぜ、だんだんと混ぜる割合を増やしていく、などといったように、ねこの好き嫌いを見ながら徐々に切り替えていきましょう。
お皿の高さ
もし高齢猫の食欲が落ちてきている場合、そして病気でもないことが明らかの場合、お皿の高さが原因かもしれません。床にお皿を直接置いていると、ねこは前かがみになって食べなければなりませんが、高齢のねこにとってはその姿勢がつらいことがあるのです。
フードを変更しても食欲が戻らない、病院で検査を受けたが特に大きな病気もない、といった場合は、台の上にお皿を置いたりしてお皿の位置を高くし、ねこが前かがみにならずに食べられるようにしてみましょう。
グルーミング
高齢のねこは、関節炎による痛みなどが原因で自分でグルーミングする頻度が減ったりできなくなったりすることがあります。そうなってしまうと毛並みが悪くなったり、汚れや抜け毛が残ったままになったりしてしまいます。優しくブラッシングをしてあげることで抜け毛や汚れを取り除き、また血行を促進させ、皮膚を健康に保つ手助けをしてあげましょう。
また、視力や聴力が落ちてしまったねこが安全に過ごすことができるよう、トイレや家具の場所など、環境をできるだけ一定にすることや、ねこをなでたり抱き上げたりするときには、名前を呼ぶ、ねこと視線を合わせる、といったことをしてから行うとねこが驚いたり怖がったりすることを防ぐことができます。
普段から気を付けるポイント
高齢猫ができるだけ健康に長生きできるよう、以下のようなことに気をつけましょう。
定期健康診断
高齢猫の健康を維持するために、定期的に病院で健康診断を受けることが推奨されます。病気になっても早期に発見することで早く治療することができ、また多くの場合、治療の開始が早いほど完治する可能性も高くなります。ねこが苦しむ時間をできるだけ短くしてあげることが大切です。
毎日の健康状態の観察
代謝性疾患や腎臓病では、飲水量や尿量が異常に増えたり、尿の頻度が多くなったりするなどの症状があらわれることがあります。毎日トイレを掃除する際に、尿の量や色に変化はないかチェックをしましょう。
また、ねこと触れ合ったり、ブラッシングをしたりするときには、甲状腺や乳腺が大きくなっていないか、皮膚にしこりやできものなどがないかを確認してあげましょう。
2. 2021 AAHA/AAFP Feline Life Stage Guidelines, J. Quimby, etc. J Feline Med Surg. 2021
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