ねこの老衰
ねこは何歳からが高齢?
ねこと楽しい日々を過ごすほど、意識しないうちにお互いが年を取っていきます。私たちが自分の年齢を知るように、一緒に過ごすねこの年齢を把握することが大切です。では、ねこは何歳からが高齢なのでしょうか。ねこのライフステージは以下の4つの段階に分けられます [1]。
それぞれの段階を人の年齢に置き換えて想像してみましょう。還暦である 60 歳になっても現役で働いている人は多く、老化の程度は人それぞれですが、20 歳の人と比べるとその身体機能は落ちているはずです。ねこも同じように老化の程度には個体差がありますが、徐々に身体機能は低下していきます。生活上様々な部分で配慮が必要です。
ねこも人と同じように老化する
私たちは高齢になると、白髪や皮膚のしわが増えたり、背中が曲がったりと体の 見た目が変化します。見た目だけでなく、体力が落ちたり、足腰に痛みを感じたり、体の内部の機能が低下することで行動が変化します。それらは、老化のサインであり、ねこにおいても同じように現れます [2]。しかし、日々の変化は小さく、一緒に過ごしていても気づきにくいでしょう。では、どのようなサインに注意すべきなのでしょうか。
このように老化に伴う変化は多岐にわたります。見た目だけでなく、行動も注意深く観察することが大切です。
老化のサインの原因 ~高齢になると生じる病気~
老化のサインに気づくことで、隠れて進行する様々な病気を早期に見つけることができます。高齢になると多い病気には、腎臓病、心臓病、歯周病、関節炎、認知症の主に5つが挙げられます。
例えば、“毛並みがパサつく”という1つのサインについても、前述の5つの病気すべてで起こりえます。腎臓病により代謝が悪くなり、体の脱水や栄養状態の悪化が生じると毛並みの悪化につながります。心臓病により疲れやすくなり、寝ている時間が増えると毛づくろいの時間が減ってしまいます。歯周病により口が痛み食事量が減ると、毛に栄養が行き届きません。また、関節炎により体の節々が痛み、体が硬くなってしまったり、認知症により認識能力が衰えてしまうと、毛づくろいがうまくできません。1つの原因からだけではなく、複合的に症状が生じている可能性もあります。
その他に、高齢になると“腫瘍”ができてしまう可能性が高まります。腫瘍とは細胞が異常に増えて、健康な臓器を障害してしまう病気です。中でも短期間に急速に悪化し、体の別の場所に転移するものを悪性腫瘍、いわゆる”がん”と呼びます。逆に、進行がゆっくりで体への悪影響が少ないものを良性腫瘍と呼びますが、いずれにしても、早いうちに発見し、対応することが大切です。
また、高齢になると甲状腺機能亢進症や糖尿病といったホルモン関連の病気も起こりやすくなります。それぞれ特徴的な体調不良のサインを示すので心当たりがある場合は動物病院を受診しましょう。
老化とうまく付き合っていく
老化に抗うことはできません。しかし、年齢を重ねる前から生活習慣に気をつけていくことで、健康寿命を伸ばすことができるでしょう。また、ねこに対しても、人と同様に日々の介護やバリアフリーが必要です。
腎臓病
・尿の量や食欲、食事量をチェックする。
・複数箇所に水飲み場やトイレを設置する。
心臓病
・無理に運動させたり、遊んだりしない。
・室温を適切に保つ。
歯周病
・柔らかい食事に変更する。
・若いうちに歯磨きの習慣をつける。
関節炎
・キャットタワーの段差を狭くする、スロープにする。
・活動範囲の床に滑り止めマットを敷く。
・複数箇所に水飲み場やトイレを設置する。
認知症
・スキンシップをとり、一緒に過ごす時間を増やす。
・トイレの場所など生活環境を変更しない。
・規則正しい生活を心がける。
・食事を温めて香りを立たせる。
病気によっては、症状にあった療法食に食事を変更することが推奨されます。ただし、あくまでもねこが好んで食べることが大前提です。いくら病気に最適でも、食べてもらえなければ意味がありません。しっかりと栄養を取ること、病気を疑うならば早く見つけてケアを始めること、適切な体型を保つことが大切です。定期的に動物病院を受診し健康診断をすることで、食事管理などの生活相談や体型のチェック、病気の早期発見ができるでしょう。
https://icatcare.org/advise/how-to-tell-your-cats-age-in-human-years/
2. Evaluating aging in cats: How to determine what is healthy and what is disease. Jan Bellows. et al. J Feline Med Surg. 2016.
3. Aging in cats: Common physical and functional changes. Jan Bellows. et al. J Feline Med Surg. 2016.
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