吐出について

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工藤 綾乃 先生 獣医師
目次

吐出とは

食べ物が胃に入る前に吐き出されることを吐出と言います。食べ物が胃に入ってから吐き出される「嘔吐」とは異なり、吐出では以下のような特徴が挙げられます。

・未消化物が吐き出される。

・食後すぐ吐き出されることが多い。(食後すぐから数十分)

・よだれや舌なめずりなど気持ち悪い様子が見られない場合が多い

・お腹が力まずに「ケポッ」と唐突に吐き出すことが多い。

 

以上の特徴を自宅で観察することは難しいかもしれません。ただし、診察時間中に吐出症状を確認できることは少ないため、ご家族の説明が非常に重要です。特に吐出とよく似た症状である「嘔吐」と区別するために、動物病院受診前にねこの症状を整理できると良いでしょう。

原因

吐出は口腔内から食道までの間に通過障害があることが原因で生じます。中でも、以下のような食道の病気が原因となることが多いでしょう。

・食道狭窄

食道が炎症や腫瘍の影響で狭くなる病気です。特に食道炎が重症化すると狭窄のリスクが高まります。

・食道内異物

食べた物が食道に引っかかって閉塞してしまう病気です。慌てて飲み込んだおやつや誤食したものが原因となりやすいでしょう。

・巨大食道症

食道が拡張し、食べ物を胃に運ぶ運動機能が低下する病気です。生まれつきの他、神経や筋肉、ホルモンの病気によって発症することがあります。

・大動脈弓遺残

胎子の成長とともに消失するべき血管が生まれつき残ってしまうことで、その血管に囲まれた食道が圧迫される病気です。離乳食から固形のごはんに移行する際に症状が見られ始めることが多いです。

このように、食道の病気にも様々です。それぞれ治療法が異なるため、必要な検査を通じて吐出の原因を探ることが大切です。

 

検査

問診と身体検査から吐出症状を疑う際は、主に以下の検査をしていきます。

・X線検査(±バリウム)

胸部のX線検査をすることで食道の異常を評価します。通常、食道はX線検査で映りません。ただし、食道が通る場所に異物やガス貯留が認められると食道の異常を疑います。その際は、バリウムなどの造影剤を飲ませてX線検査することで食道が映るようになり、閉塞や拡張の有無を評価できます。

・内視鏡検査

カメラを使用して食道の異常を目視することができます。また、場合によっては異物を摘出することもできるでしょう。食道粘膜の異常がある際は、一部を切除して病理組織検査をすることもあります。内視鏡検査は食道の病気の精査に非常に有効ですが、全身麻酔が必要なため、事前に血液検査などの他検査で全身状態をチェックしてから臨みます。

・CT検査

食道やその周囲の臓器の形態的な異常を疑う場合は、詳細な病状を把握するためにCT検査を検討します。内視鏡検査と同様に全身麻酔が必要なため、ねこの状態に注意して計画を立てましょう。 吐出症状が強い場合は、食事がとれない状態が続くため、徐々に体力が低下してしまいます。なるべく早くに動物病院を受診し原因を探りましょう。

 

治療

吐出の原因によって治療法は大きく異なります。

・食道狭窄

胃腸薬によって胃酸の過多や胃液の逆流を抑え、食道炎の悪化を防ぐことが大切です。狭窄した食道は、内視鏡下でバルーンを膨らませたり(バルーン拡張術)、特殊な筒を通したりして(Savary dilator)、食道を内側から押し広げる治療が有効です [1]。ただし、再狭窄や食道の損傷の恐れもあるため、リスクを考慮した上で検討しましょう。

・食道内異物

早期に異物を摘出することが求められます。内視鏡による摘出を試みる場合が多いですが、胃に押し戻して胃切開により外科的に摘出する場合もあります。異物の形状によってなるべく食道を傷つけない摘出方法を検討します。

・巨大食道症

拡張して機能が低下した食道でも上手く生活できるように付き合っていく治療がメインとなります。高栄養の食事を与えた後、数十分程度の間、縦に抱いて食べ物が重力で胃に流れるよう補助します。そうすることで、誤嚥してしまうことも防ぎます。食道拡張の原因として、筋肉や神経、ホルモンの異常があればその治療も同時に進めます。

・大動脈弓遺残

食道を締めている遺残した血管を早期に切除する外科手術が必要です。専門性の高い手術であることに加え、術後も食道拡張が続くことがあるため、治療が難しい病気です。

 

受診のタイミング

ねこは、もともと吐くことの多い動物ですが、吐出が見過ごされると病状の悪化につながります。症状が強い場合は、ねこの体力が落ちてしまう前に早めに動物病院を受診しましょう。特に、子ねこで発育が遅い場合や、誤飲・誤食に心当たりがある場合には、より注意が必要です。

 

参考文献
1. The use of Savary-Gilliard dilators in the treatment of an oesophageal stricture in a cat. Kaczmar E.Vet Res Commun. 2022 Feb.
この記事を監修した人
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工藤 綾乃 先生 獣医師

札幌出身。地元の北海道大学を卒業後、関東の動物病院で勤務。腫瘍症例の治療に携わるなかで、より効果的な治療を見つけたいと考え、現在は麻布大学博士課程に在籍中。ねこと暮らしながら実験漬の日々を送っている。専門や興味のある分野は、がん、麻酔・集中治療、野生動物臨床など。

発行・編集:株式会社トレッタキャッツ

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