ねこの嘔吐について|原因や自宅での注意点

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工藤 綾乃 先生 獣医師
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ねこは吐き戻しやすい動物

嘔吐は、胃や消化器の障害によって引き起こされることもありますが、その他にも様々な原因から起きうる症状です。ねこはもともと吐きやすい動物と言われており、健康面に問題がなくても毛玉などを吐き戻すことがあります。嘔吐物がおもに毛であり、その他の体調がいつも通りの場合には胃に溜まった毛玉を吐き出す生理的な反応の可能性も考えられます [1, 2]。

  

嘔吐を引き起こす主な原因

ねこが嘔吐してしまう原因は多岐に渡り、嘔吐の症状だけから原因を推測することは困難です。しかし、誤って中毒を起こすものを食べてしまったり、ストレスが増えたりという心当たりがあれば原因を推測することもできます。

どのような原因で嘔吐することがあるのか、確認していきましょう。

○食餌の問題

 食事内容の変更、食物アレルギー、早食い

○中毒物質の摂取

 ネギ類ユリ科の植物、人体薬など

○胃腸の病気

 胃炎、胃潰瘍、紐やおもちゃなどの異物閉塞、幽門狭窄、腸炎、腸捻転、消化管腫瘍、寄生虫など

○代謝性の病気

 糖尿病、腎不全(急性腎障害慢性腎臓病)、甲状腺機能亢進症、肝不全、子宮蓄膿症など

○腹腔内の病気

 膵炎、腹膜炎、腹腔内腫瘍など

○細菌性・ウイルス性の病気

○毛玉の吐き戻し

○ストレスや環境の変化

また、上記の原因以外にも、便秘や脳の疾患が原因で嘔吐が生じることもあります。

 

嘔吐のときの検査 

嘔吐があるときには、嘔吐物の内容や体調の問診が重要です。吐いたものの写真を撮影しておくことで、スムーズに診察を進めることができます。

代謝性の病気が疑われる場合には血液検査を、胃腸や腹腔内の異常を判断するためにはX線検査やエコー検査を検討します。異物による消化管の閉塞が疑わしい場合には、バリウム検査を行うこともあります。

 

 似ていても違う、『吐出』

嘔吐とよく似た症状に、「吐出」があります。嘔吐は一度胃に入った食べ物が吐き出されることを言い、吐出は食べ物が胃に到達する前に食道から吐き出されることをいます。食後すぐに未消化の食べものを吐き出すようなら、吐出の可能性も考えられます。「オエッ」と胃からせりあがる様子ではなく、「ケポッ」と唐突に吐き戻す様子が特徴的です。原因としては、食道拡張、食道・噴門部狭窄や若齢の心臓血管の奇形などが挙げられます。

嘔吐の場合

体全体を使って胃から「オエッ」と吐く。

吐出の場合

胃まで食物が達していないため、食後などに「ケポッ」と軽く吐く。

詳しくは吐出に関する記事をぜひご覧ください。

ねこの吐出 

 

自宅で注意するポイント

嘔吐の症状からのみ原因を特定することは難しいため、嘔吐が続く場合には一度動物病院を受診ください。特に、1日に何度も嘔吐が続く場合、食欲や元気がなくなっている場合、誤飲・誤食に心当たりがある場合には、早めの受診が必要です。
また、子ねこの場合には体力が低く体調が悪化しやすく、低血糖を引き起こす可能性があるため、嘔吐がある場合には特に注意してみてあげましょう。

参考文献
1. A potential nutritional prophylactic for the reduction of feline hairball symptoms. J R Dann et al. J Nutr. 2004.
2. Hair balls in cats: A normal nuisance or a sign that something is wrong? M Cannon. J Feline Med Surg. 2013.
3. Review of feline pancreatitis part one: the normal feline pancreas, the pathophysiology, classification, prevalence and aetiologies of pancreatitis. C S Mansfield and B R Jones. J Feline Med Surg. 2001.
4. Review of feline pancreatitis part two: clinical signs, diagnosis and treatment. C S Mansfield and B R Jones. J Feline Med Surg. 2001.
5. Chronic Vomiting in Cats: Etiology and Diagnostic Testing, S R Hauck et al. J Am Anim Hosp Assoc. 2016.
この記事を監修した人
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工藤 綾乃 先生 獣医師

札幌出身。地元の北海道大学を卒業後、関東の動物病院で勤務。腫瘍症例の治療に携わるなかで、より効果的な治療を見つけたいと考え、現在は麻布大学博士課程に在籍中。ねこと暮らしながら実験漬の日々を送っている。専門や興味のある分野は、がん、麻酔・集中治療、野生動物臨床など。

発行・編集:株式会社トレッタキャッツ

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