ねこもバテる?夏の対処法

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原田 優眞 先生 獣医師
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ねこの夏バテ

人と違いねこは全身から汗をかくことができず、体から熱を逃がす機能は、足裏のパッドから汗を出すか、稀に口を開けて呼吸するくらいです。そのため、上手く体温調節が出来ないほど暑い環境だと、夏バテを起こしたり熱中症になってしまいます。

特に肥満ぎみのねこや短頭種(ペルシャ、ブリティッシュショートヘアーなど)、全力で動き回る若齢ねこ、体温調節の機能がにぶくなる高齢ねこなどでは体温が上がりやすいので注意が必要です。

自宅の室温ケア

・適正な室温

ねこの適切な室温という決まったものはありませんが、基本的に人が不快に感じない温度を保ってあげましょう(目安は25℃前後)。留守中にも室温が上がりすぎないようにしたり、涼しい部屋に移動できるようにしてあげてください。

・扇風機やエアコンの利用

涼しい空気を循環させるという目的であれば扇風機の利用は効果的であると思われます。ただあまりにも室温が高い場合には逆に熱風がまわってしまうだけになりかねないので、エアコンとの併用を行う必要があります。

・暑い時に出る症状

ねこが暑いと感じた時には、落ち着かずに涼しいところを探してウロウロしていたり、呼吸が荒かったりという症状が現れます。また、パッドの汗、涎、口の赤み、嘔吐、ふらつきなどの症状が出ることもあります。もし部屋の温度が高く、このような症状が出ているようであれば室温の見直しが必要となりますし、嘔吐やふらつきがでるほどであれば一度動物病院の受診が必要です。

家での体温測定は難しいと思われますが、ねこの平熱は直腸温で36.7-38.9℃と言われていますので、これを越えている場合は要注意です [1]。

熱中症

暑い場所にいたねこで体温が40.5℃を越えている場合、熱中症が疑われます [2]。熱中症では重度の臓器障害や死に至る可能性があります。

特異的な例では、衣類乾燥機に入ってしまったねこが10-15分後に熱中症で発見されるという事故も報告されています [3]。乾燥機があるご家庭では、気づかないうちにねこが入らないよう注意が必要です。

・症状

熱中症の症状として、暑い時の症状である口を開けた呼吸や脈が速くなることの他に、重いものだと倒れたり、吐いたり、意識を失ったりなどの症状が出ることもあります。

・応急処置

暑い部屋、暑い環境で熱中症を疑う症状が出ている場合には、応急処置を行う必要があります。室温を下げ、霧吹きなどで水をかけたり、濡れタオルで体をくるんだり、タオルにくるんだ保冷剤を脇や股の間に挟んだりし、体温をさげます。

しかし、急激な体温の変動や体温の下がりすぎが体に悪影響を与えてしまうこともあるため、自宅での処置には注意が必要です。

・受診

熱中症が疑われる場合には、応急処置を行いながら、出来るだけ早く動物病院を受診することをお勧めいたします。入院下で体温を測定しながら適切にねこを冷やたり、脱水補正やミネラルの補正のため静脈点滴を行ったり、血液検査の結果などに合わせて治療を行う必要があります。

 

夏の対策

基本的には人の熱中症対策と同じ対策です。

・日陰の用意

窓ガラス越しにずっと日光を浴びる状況などで高体温になるリスクを避けるために、日陰や風通しの良い場所を用意してあげましょう。

・室温管理

日本の夏は人も熱中症になるほど暑くなる日も多いので、留守にする際もエアコンなどで室温を管理してあげることをお勧めいたします。

・十分な飲水場所の準備

ねこが脱水を起こしてしまうリスクを避けるために、十分な水を用意しておくことも大切です。暑い日は水分が蒸発しやすく、気が付いたらお皿の水が無くなっているということも起こり得るので注意が必要です。

・毛の管理

毛玉だらけで熱のこもりがちな身体にならないよう、こまめなブラッシングなどで皮膚・被毛の健康を保ってあげましょう。

夏バテや熱中症は気づかないうちに起きてしまう症状です。夏になる前に対策をはじめることで、快適に過ごさせてあげたいですね。

 

参考文献
1. Reference interval for rectal temperature in healthy confined adult cats. J K Levy et al. J Feline Med Surg. 2015.
2. 猫の治療ガイド2020 私はこうしている 辻本元ら、EDUWARD Press p75 – 78
3. Clothes dryer–induced heat stroke in three cats. S E Cudney et al. J Vet Emerg Crit Care. 2021.

この記事を監修した人
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原田 優眞 先生 獣医師

広島出身。北海道大学を卒業後、関東の動物病院で犬・猫・エキゾチック動物などの診療に従事。犬だけではなく、いろんな動物の医療が充実するといいなと思ってます。興味のある分野はエキゾチック動物、野生動物、血液など。

発行・編集:株式会社トレッタキャッツ

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